パン生地の乾燥は最大の敵
こんな質問をいただきました。
私は手捏ねにこだわっているのですが、どうしても生地が乾燥ぎみになってしまいます。
パン教室の先生からは、とにかく早く作業をすれば解決すると教わっているのですが、どうしても乾いてしまいます。
時折霧吹きをしながら作業をしているのですが、何か解決方法は他に無いのでしょうか?
ホームベーキングで一番起こり易い現象が、この生地の乾燥ですよね恐らくは。
生地の乾燥は、私達パン屋でも当然お付き合いしなければならない問題でもあり、この部分をクリヤー出来なければ、しっとりとしたパンは完成しないのです。
パン屋の工房でパン生地が乾燥する原因には、次のようなものがあります。
1.冬で湿度が極端に少なく、温度も20℃以下と寒い時。</p>
2.生地の捏ね上げ温度が高い時。
3.生地が極端に硬い時。
4.夏に冷房の風が生地に当たった時。
この中で、家庭でのパン作りに一番当てはまるのはどれでしょう?
それは全部当てはまるが正解です。
そうなのです。 パン屋さんでも家庭でのパン作りでも、生地の乾燥する条件は皆同じなのです。
ですから、上の四項目をまずしっかりと頭に入れて下さい。
部屋の中を乾燥させないようにするのは、そう難しい事ではありませんね。
問題は、生地が硬い時と捏ね上げ温度が高い時にどうするかと言う事なのです。
実は、この二つは密接に関係がありまして、パン生地は硬いと、捏ねるのに沢山の力が必要になります。
沢山捏ねる=温度が上がってしまうと言う事につながるのです。
ですから、まずは水を増やしてもう少し柔らかい生地にする事です。
柔らかい生地は、ベタベタするので手捏ねでは嫌われがちですが、馴れると非常に扱いやすくなりますし、パンもしっとりと仕上がるようになります。
柔らかい生地と言うのは摩擦にも強く、手で捏ねる時のダメージも少なく済みます。
材料をざっくりと混ぜた後に一度生地の温度を計って下さい。
例えばその時点で温度が23度だったとします。
この時の生地が硬いと、どんどん温度が上昇し、30℃を超えてしまう事があります。
しかし、生地が柔らかいと、28℃程度で治まります。
レシピにもよりますが、最終的な生地の温度は、28℃を超えてはいけません。
その辺りから、生地は急激に乾燥し始めるのです。
生地の捏ね上がり温度が30℃またはそれ以上になった場合は、絶対に生地が乾かないように、ボールにサラダ油を塗ってから生地を入れて下さい。
粉をふると余計に乾燥してしまいます。
しっかりとラップをして、出来るだけ低い温度の場所で保管します。
そんな場所が無い場合は、一度冷蔵庫へ入れ、15分ほどしたら室温に戻します。
更に、発酵時間は既定の半分位で終了させ、すぐに分割に入ります。
分割後もサラダ油を敷いた入れ物でベンチタイムを取って下さい。
この時も手粉は出来るだけ使用しないでください。
サラダ油を少し手に塗って作業すると、べたつかずに済みます。
ビニール手袋も生地がくっつきにくくて効果的です。
ベンチタイムも少なめで済むように、生地は軽く丸める程度にするか、生地が硬い場合などは、切り分けた状態のままであまりいじらないようにします。
出来るだけ速やかに作業をするという点では、パン教室の先生の言われる通りだとも言えます。
しかし、速やかに作業しなければならないほど捏ね上げ温度が高くなってしまった生地では、しょせん美味しいパンにはなりません。
捏ね上げ温度を低めにして、じっくりと発酵時間を取った方が、よほど美味しいパンになりますし、そんなに焦る必要はなくなるのです。
皆さんから寄せられる質問では、必ずと言っていいほど生地の温度を計っていないケースが多数です。
パン屋さんでも、温度を計らないパン屋さんほどパンが不安定なのは事実なのです。
生地の温度を知ると言う事は、パン作りの基礎中の基礎であり、その部分を勘に頼る事によって、好い加減ならぬ、いいかげんになってしまうのです。
正しい理屈と磨き抜かれた技術。
このどちらかでもいい加減だと、常に失敗は付きまとう事になります。
手厳しいようですが、いつも同じ失敗を繰り返さない為に、 生地の温度管理がパン作りの要、 そうご理解下さいね(*^_^*)
それと、パン生地はリーンな方が断然生地が乾きやすくなります。
ですから、油脂を多めに入れるだけで作業が格段にやり易くなりますので、原価は少し上がってしまいますが、規定よりも多めに入れると乾燥には効果的ですよ(*^_^*)
砂糖もそうですが、砂糖は多く入れるとダイレクトに甘くなるので、多めと言う訳にはいかないでしょうが・・・
生地の分割前の状態、成形前の状態、焼く前の状態が、自然としっとりしていたら、それが最高の状態であり、カサカサだったり、べたべただった場合は、必ず温度管理に問題があったと言えるのです。 赤ちゃんの肌のようにしっとりすべすべな生地になるように、気を使ってあげて下さいね。
パン作りには欠かせないポイントを解説していますので、こちらの記事も参考にしてみてください。