やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

イースト菌の配合量の決め方 その2

 

加糖用イーストの適正量について

 

では今回は、フランスパン以外のいわゆる加糖パンに使用するインスタントイーストの量について説明していきたいと思います。

前回は、インスタントイーストの赤ラベル(無糖用)の特性について書きましたが、今回は加糖用の金ラベルについて説明します。

加糖用のインスタントイーストとは、ずばり用途も効果も生イーストとほぼ同じです。

しかし、その活性力は非常に強くなっていますので、生イーストの三分の一程度で同じ発酵力を得る事が出来るのです。

前回登場した活性ドライイーストの場合は、生イーストの半分量が適正とされていましたが、インスタントになって更に発酵力が強力になりました。

フランスパンの場合のイースト量と言うのは、どの程度発酵時間を取るのかによって大きく違うと前回書きました。

しかし、その他の砂糖を配合するパンの場合は、すこし理屈が違ってくるのです。

フランスパンの場合は、じっくりゆっくり低温域での発酵が望ましいのですが、一般的な菓子パンやロールパンなどの場合は、速やかな発酵時間と、28℃~38℃の高温域での発酵が望ましいのです。

それはなぜかと言いますと、砂糖を配合するパンの場合は、よりソフトに、よりしっとり感を強調したいからなのです。

これらのパンをじっくりと時間をかけて低温域で発酵させていくと、どうしても表皮の薄いふんわりとしたパンにはならず、表皮の厚い重い感じのパンになってしまうのです。

もちろんそのようなパンにしたいのなら、それでも構わないのですが、あくまで一般的に好まれているのはソフトなパンであり、その為に砂糖を配合していると言うのが一般的な考え方だからなのです。

様々な製法がある中で、一般家庭で最も多く使われている製法と言えば、ズバリストレート法であり、レシピも家庭用のほとんどはストレート法でのものになっていると思います。

フランスパンとその他の砂糖を配合したパンの決定的な違いと言えば、フランスパンは発酵による旨味が全てであったのに対して、砂糖が入ったパンでは副材料の旨味を生かす作り方が望ましいと言う点なのです。

バターや卵や牛乳などの副材料を配合したパン生地は、どれもイースト菌の発酵の妨げになる為に、これらの副材料が多く配合されればされる程、イースト菌も増やさなければならないのです。

そして、副材料の中で最もイースト菌の活動に影響を及ぼすのが砂糖と塩なのです。

砂糖は少量ならイーストの活力源になるのですが、多ければ多いほどイースト菌の活動を妨げます。

塩はパンの味の決め手であり、パンのボリュームを決める重要な材料でもあり、雑菌を制御するイースト菌の守り神でもあるのですが、砂糖と混ざる事でこれまたイースト菌の活動の妨げにもなるのです。

副材料の入らないフランスパンの場合は、イースト菌はゆ~くり活動していれば良かったのですが、砂糖やらバターやらがたくさん入ってきますと、大慌てで発酵活動を始めないと副材料に負けてしまうのです。

と言う事で、砂糖にも負けずバターにも負けず卵にも負けない強いイーストである金ラベルが必要であると言う訳なのです。

では、その最もイースト菌に影響を及ぼす砂糖と塩の配合バランスと、その時のイースト量をまとめてみましょう。

 

(単位%)

砂糖の量  塩の量  イーストの量

1~5    2     1

  6    2     1

  8    2     1.2

 10   1.8    1.2

 12   1.7    1.3

 14   1.6    1.4

 16   1.5    1.5

 18   1.3    1.6

 20   1.2    1.8

 

あくまで目安です。

上記の配合量で、生地を捏ねてから60分の発酵時間を取るのが一般的なストレート法となります。

捏ね上げ温度は28℃前後が適正です。

たまたまかもしれませんが、質問されてくる方のレシピを拝見すると、そのほとんどで塩が非常に少ないのです。

これは減塩を目的としているのかどうかは解りませんが、塩が与える影響はなんと味だけの問題ではないのです。

味噌汁・炒め物・お新香・・・減塩は今では全ての家庭で行われているのではないでしょうか?

この場合は、味が薄くなると言う事だけで、それに馴れればどうという問題はありませんね。

しかし、パンの場合は塩が少なくなると、パン生地がゆるんでベトベトしたり、生地が発酵過多になりやすくなったり、焼き色がぼけたり、カビが生えやすくなったりしてしまいます。

塩は小麦のグルテンを引き締めて製パン性を向上させ、プリッとした生地にしてくれます。

また、成形などで生地を傷めた時の修復にも力を発揮します。

さらに、生地の入れ物・作業台・発酵室・空気中などに多くいる雑菌が、少なからずパン生地にも付着します。

しかし、適量の塩が配合されていると、その制菌効果によって雑菌の繁殖を防いでくれるのです。

パンにおける塩の役割は、味だけではないのですね(*^_^*)

ですから、むやみに塩を減らすのはお勧めできません。

また、砂糖を配合するパンに無糖用のインスタントイースト赤ラベルを使用する場合はどうなるかと申しますと、砂糖の量が8%位までなら代用出来ると思います。

その場合の使用量は0.2%増程度で十分だと思います。

しかし、砂糖の量がそれ以上になると、極端に発酵力が低下してきますのでお勧めは出来ません。

インスタントイーストはそもそも保存性に優れているのですが、それでも開封後は冷蔵保存で一月程しか持ちません。

ですので、現在では冷凍庫で保存できるインスタントイーストがサフで販売されています。

冷凍庫から出して使用して、すぐにまた冷凍しますので、その分保存がききます。

私も現在はそれを使用しています。 

発酵力等は同じです。

いかがですか? イースト菌の量は、砂糖と塩の配合量によってほぼ決まってくると言えるのです。

それを増やしたり減らしたりはお好みで構わないのですが、製パン的に全てが変わってくると言う部分を見逃さないでおいてくださいね。

そうでないと、思わぬ失敗が・・・・