やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

パン作り ここを押さえれば失敗しない ポイント&アドバイス2

 

 生地作り・ミキシングについて

 

家庭でパンを作る場合、手で十分にパン生地を捏ねるという事は不可能ともいえます。

食パンのようにキメの細かい内層にしたい場合、ミキサーという機械を 使っても、約15分程度のミキシング時間が必要です。

そんな機械のようなミキシングを手で行うのは無理な話で、結果、 キメの粗いクラム(内層)となり、最悪ふくらみの悪い団子のような食感のパンに なり、短時間で硬くなってしまうのです。

では、それを補うにはどうしたらよいでしょうか?

  

ポイント1  捏ねない方が美味しいパンもたくさんあります。

 

パンには様々な種類があり、その中にはあまりパン生地を捏ねない製法が向いている パンが多数あります。   

代表的なものにはフランスパンなどがありますが、それらのパンは生地を 捏ねすぎると美味しいパンになりませんので、そのようなあまり捏ねる 必要の無いパンを主体として作るというのがひとつの方法です。

 

ポイント2  手作りの強い味方発酵種  

 

次に、最も推奨している製法である発酵種を配合するという方法です。 

発酵種についてはこちらで紹介しています。

 

sizuasa.hatenablog.com

 

どのようなパンにも、発酵種を入れることによって捏ねる作業が大幅に短縮 できます。

発酵種は冷蔵庫の中で一晩低温発酵させますが、その間ゆっくりとミキシン グされているのと同じ原理で、配合することによって、まるでしっかり捏ね た生地のような、十分にミキシングされた状態を得ることが可能になるのです。 

発酵種を添加することによって、発酵種の持つしっとり感や発酵風味や生地 の強いコシ(グルテン)などが得られ、手で捏ねた時の不足分を補って くれるのです。

 

ポイント3  手間ひまかけた最高品質のパン作りを

 

家庭で作られるパンのレシピは、そのほとんどがストレート法(簡便法) という製法で作られています。 

大量のイースト菌を配合する事で、スピーディーにふくらませようとする 製法ですが、パン作りに一番必要な熟成の旨味を得る事が困難です。

そこで、家庭で作る場合は中種法という製法をおすすめします。

中種法とは二段階に分けてパンを作る製法なので時間がかかってしまい ます。 

しかし熟成時間が長く取れますので、ミキシング不足をおぎなってパンが ソフトになるばかりか熟成の旨味がパンをしっとりと香り高いものに仕上 げてくれます。

 

中種法に関してはこちらをチェック

 

sizuasa.hatenablog.com

 

ポイント4  生地の完成度は捏ね上がりの温度で決まります。   

 

バターロールの生地を捏ねたとします。

25℃で捏ね上がったら発酵時間は 約90分かかります。

また32℃で捏ね上がったら発酵時間は20分程度で作業にかからなければ なりません。 

このように捏ね上がり温度によってその後の発酵時間が極端に変わってくる 事はもとより、30℃を超えたパンや22℃以下のパンは殆どの場合失敗し ます。

つまり美味しくは出来ないという事です。 

イースト菌が発生させる炭酸ガスによってパンは膨らんでいきますが、その 炭酸ガスの量は決まっています。

捏ね上がり温度が高いとガス発生が早く行われすぎて、肝心の焼成時には 残り少なくなり硬いパンとなります。

逆に温度が低いとガス発生が遅れ、十分に膨らんでいないまま焼成すること となり、やはり硬くしかも香りの悪いパンとなります。 

このようにパン生地の捏ね上がり温度はとても大切なのです。

一般のパンの殆どは28℃が適正温度です。

28℃で捏ね上げた生地を28℃の場所で保管することが、生地作りで最も 重要なポイントなのです。

 

分割・成形について

 

この部分は、パン作りの根幹ともいえる部分であり、パンの良否はここで ほぼ決定してしまいます。

しかしながら、レシピとして伝える事が非常に難しく、どのレシピでもあまり 触れられていない部分なだけに、たいがいはここで失敗することになります。

パン生地は無数の風船の集合体です。

生地の取り扱いに熟練していれば、 風船はパンが焼き上がるまでそのまま残りますが、成形段階でパン生地を 傷めてしまうと風船がかなりの割合で割れてしまい、ふくらみの悪いパンが 出来てしまう事になります。

では、どうすれば風船の割れを防ぐ事ができるのでしょう?

 

ポイント1  パン生地は決して乾燥させてはいけません。

 

パン生地はすぐに乾燥します。

特に冬場などは3分もすれば表面が乾いてきます。

パン生地が乾燥すると発酵中に生地が割れて裂け目が出来、パンのしっとり 感が一挙に奪われてしまいます。

成形時は生地をタッパーなどに入れ、一つずつ取り出して成形するなどの 配慮が必要です。

また、パンを作る室内を乾燥させないように冬場はお湯を沸かすなど、 適度な湿度を保つ事が大切です。  

パン生地が乾燥したら霧吹きなどで表面に水を吹きかければ大丈夫などという レシピもありますがとんでもありません。

もし乾燥してしまったら、ビニール袋の中に入れるかラップで包み、 自らの水分で表面がしっとりしてくるのを待って下さい。 

少しの時間でしっとり感が戻りますので、すぐ成形を行って下さい。

 

ポイント2  手粉の使いすぎに注意しましょう。

 

特に最初の頃は手粉を多く使ってしまいがちです。

せっかくしっとりしてい るパン生地の表面を、粉をつけて乾燥させてしまっては台無しです。

手粉の使い方はとても重要で、成形の手法よりも手粉をどのようにどのくらい使うかの方がとても大切なのです。

べとついている場合でも、少し時間をおけば表面が乾いてきますので、 そこで成形するようにするなど、手粉の使い過ぎだけはご注意下さい。  

どの段階でもパン生地に余分に小麦粉が付着していると、焼き上がったパン の表面に艶がなく、まだら模様になります。

手でパン生地を扱うにしても、大手のように機械でパン生地を扱うにしても、霧のように細かく小麦粉をふりかけながらおこなわなくてはならないのがパン生地を扱う上での絶対条件になります。

それくらい重要で大切なのが手粉の使い方であることを知っておいてください。

 

ポイント3  ベンチタイムの重要性について

 

パン生地はとてもコシの強い物体です。

対照的なのが“ねんど”で、誰でも 一度は触った経験があるでしょう。 

ねんどは指で押しても穴が開くだけで決して元にはもどりませんよね。

しかしパン生地は違います。

押しても引いても必ず元に戻ろうとします。

好みの形に成型する為に一生懸命叩いたり伸ばしたりしますが、 なかなか言う事を聞かない為何度も何度も生地をいじめてしまい、 結果たくさんの風船が割れてしまうのです。

ベンチタイムとは休憩時間という意味で、パン生地は一度衝撃を与えると その度に休息が必要なわがままな性質をもっています。

生地を適度な大きさに切り分け〈分割〉た後、20分程度ベンチタイムを 取り成形に入るわけですが、この時のチャンスは一度きりなのです。

なるべく短時間で、しかも生地をあまり傷めることなく成形を終えればOK ですが、もし複雑な成形の場合はもう一度休憩が必要となってしまいます。

その目安はとても解かりづらいので、なるべく簡単な成形方法を選ぶ事が パンの完成度を高めてくれます。

では、いったいどの程度の時間ベンチタイムをとるのが理想かというと、 それは配合や生地の温度や硬さなどですべて違いますし、またそれが解か るようになることがパン作りの最重要ポイントとなるのです。

どんな生地でも約15分もすればゆるんできますので、分割後15分から 30分の間に成形するのが一般的です。

コツとして分割時に生地をあまり締め過ぎると回復に時間がかかりますので、 軽く丸める程度で終えることです。

また、ベンチタイム中も発酵は行われていますので、あまり長く取りすぎた り成形に時間がかかりすぎてもアウトです。  

成形をスムーズに終える為のキーワードは  ”優しくスピーディーに表面を張る” ことです。

手粉をいかに上手に使いながら、そして優しくスピーディーに表面を張る事ができるか、この両方を習得出来た人なら、どのようなパンでも美味しく作れることが保証されるはずです。

 

分割や成形などに関してはこちらの記事も参考にしてください。

 

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