こんな質問をいただきました。
発酵種って凄いですね! すっかりはまっています。
有り難うございます。
生地作りが断然楽になりましたし、以前よりも捏ねていないはずなのに今の方がキメが細かいような気がします。
そしてやはり美味しくなった気がします。
でも、それってどうしてなのかが解りません。
美味しくなるのは何となく解るのですが、どうしてあまり捏ねなくてもちゃんとした生地になるのですか?
そうですね~ 不思議ですよね~
発酵種を入れる・・・これは低温熟成発酵した生地を入れる訳ですよね。
片や粉と水とその他の材料がいよいよこれから混ざろうと言う所に、すでに発酵が完了している生地を入れる。
これは難しく言うと浸透圧の影響で互いのタンパク質が・・・ と言うのはやめて、運転免許の更新に行った事はありますか!
あれって見知らぬ顔が勢ぞろいしていて、居心地が悪い割には、意外と時間がかかるものですよね。
会場に入っていくなり、まずはどの窓口に行けばいいのか解りづらく、立っている人や座っている人が皆こちらを見ている感じがして、なんとも落ち着かないという経験はありませんか?
でも、もし会場に入っていくなり、いきなり顔見知りなり会社の同僚なりがいたとしたらどうでしょう!!
「え~、やだ~、うっそ~、なんで~」・・・って女性限定かっ!
すぐにその場が楽しい落ち着きのある場に変わると思いませんか?
つまり、初めての所に一人で行くと、なかなかなじめないのに対して、顔見知りがそこにすでにいると言うだけで、と~っても居心地が良くなるのです。
この顔見知りが、ずばり発酵種なのですね!
すでに十分ミキシングされて捏ねられた状態の生地がそこにいるだけで、いざこれから捏ね始めようとしている生地は、 え~、いやだ~、うっそ~、いたの~
みたいな親近感が沸いてきて、まるで捏ね上がりを手伝ってもらっているかのような状態になるのです。
これは何も発酵種に限った事ではないのです。
例えば、油脂が沢山入るパン生地なら、初めに少しだけ入れておくと、後から入れた油脂がとても混ざりが早くなります。
さらに、スポンジケーキなどを作る場合も、立てた卵の一部を溶かしたバターに少量加えてから、その後にすべてを混ぜたりします。
ホイップされた卵に、一度に溶かしたバターを入れたら、そもそもが水と油ですからビックリして分離してしまうのですが、溶かしたバターに最初は少しだけホイップした卵を入れてまずはご挨拶をしておいてから、顔見知りになった所ですべてを入れれば、ビックリしなくて済むのですね。
何となくお解りいただけましたか???
発酵種の作り方はこちらをご覧ください。
発酵種を入れた生地は、あまり捏ねなくても十分に生地がつながり、キメの細かいパンになります。
ではどれくらい入れればどれくらいミキシング時間が短縮されるのでしょうか?
それは、手捏ねだと皆様の技量によって変わってきますので、業務用のミキサーでの時間を目安として紹介しておきます。
まず、平均16分でミキシングが終了する食パン生地があったとします。
そこに発酵種を10%添加すると、1分から2分ミキシング時間が短縮できます。
20%添加すると、2分から3分短縮できます。
30%添加すると、5分程短縮できます。
40%添加すると、7分程短縮できます。
それ以上は入れた事がないので解りませんが、あまり多く発酵種を入れても、本来の配合の意味が無くなってしまいますので、最大40%までをお勧めします。
しかし、40%添加すると、ミキシング時間は概ね半分にまで短縮する事が出来ると言う事は、かなり手捏ねにとっては楽になりますし、生地を傷める事も少なくなると考えられます。
ただし、発酵種を40%入れた生地を手で捏ねた場合、いつもの半分の時間でいつものような状態の生地にはなっていないと思います。
どう言う事かと言いますと、捏ね終わってすぐの段階では、まだお互いがなじんでいないので、一見中途半端な捏ね状態に見えるのですが、その後の発酵時間中にどんどん勝手に内部ミキシングされていきますので、時間の経過と共に滑らかな生地になっていくのだとお考えください。
こんな状態でミキシングを終了して本当に大丈夫なの?????
と思っていたら、完成品は実にキメ細かくてビックリ・・・ そんなイメージだとお考えくださいね(*^_^*)
私はもう若くはありませんが、発酵種を使う事で、手捏ねでも食パンの10本位は平気で捏ねられますよ。
ただし1.5斤型ですが (^0_0^)
では、発酵種を使わなかったらどうでしょう??
たぶんバターロール30個位でギブアップだと思います (ー_ー)!!
このように、発酵種を使っていただくだけで、
- 風味が良くなる。
- しっとり感が持続する。
- ボリュームが出る。
- キメが細かくなる。
- クラムがキラキラとみずみずしくなる。
だけではなく、捏ねる時間も短縮できるわけですね。
また、発酵種を使うと、このような大型のカンパーニュでもしっかりとボリュームのある、それでいて香ばしいパンに仕上がりますから、ハード系のパンにも是非添加してみて下さいね。
ちなみにご家庭で作る配合はこんな感じです。
(ベーカーズパーセント) 1個分(約460gだと)
リスドォル・・・・・・・・・70% 140g
国内産全粒粉・・・・・・・・20% 40g
ライ麦粉・・・・・・・・・・10% 20g
発酵種・・・・・・・・・・・30% 60g
上白糖・・・・・・・・・・・・2% 4g
塩・・・・・・・・・・・・・・2% 4g
インスタントイースト・・・0.8% 1.6g
ユーロモルト・・・・・・・0.3% 0.6g
ショートニング・・・・・・・・2% 4g
水・・・・・・・・・・・・・70% 140g
クルミ・・・・・・・・・・・25% 50g
作り方
クルミと発酵種以外の材料をすべてボールへ入れ、粉っぽさが無くなるまで混ぜる。 初めはクルミなしで作ってみて下さい。
粉っぽさが無くなったら発酵種を入れて一緒に混ぜる。
そのままボールの中で握力でモミモミしたり体重をかけたり引っ張ったりしながら、5分ほど頑張る。生地の温度は24℃位が良い。
ボールにラップをかけて30分発酵させる。
※適温なら室温で、温度が低かったら温かい場所へ、温度が上がってしまったら一旦冷蔵庫へ入れて希望の温度まで下げること。
30分後にまな板の上に取り出し、キレイに丸め直す。
再びボールに移して30分発酵させ、またまたまな板の上で奇麗に丸め直してボールに戻す。 ここまでで60分の発酵。
この後さらに30分発酵させて終了、お好きな形に成形して焼きましょう。
と大雑把な説明ですが、各ご家庭で発酵のさせ方も道具もオーブンもどのみちバラバラでしょうから、生地が出来たら後はどのような大きさや成形にアレンジしていただいても構わないのです。
あまり捏ねなくても、発酵種の力でかなりボリュームのあるパンになるはずです。
水はやや多めですが、ご自分の力量に合わせて変更してくださいね。
ただし、多いほど美味しくなることは間違いありませんよ。
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