やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

冬のパン作り、ここに注意してください・・・

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さむ~い冬がやってまいりましたね~

それでも早朝からパン作りをされている方、まことにお疲れ様です。

作業の合間に食べるトーストに幸せを感じている方も多いと思いますが、みなさんは何派ですかね?

画像のようにシンプルにバターですか?

それとも更にそこにハチミツですか?

いやいや、ガーリックバターで朝からヘビーにと言う方もいるでしょうね。

以外にもオリーブオイルもいけますし、私はそこにブラックオリーブのスライスをまき散らして食べたりします。

いずれにしても、このように厚切りにして、さらに切込みを入れて焼くのがポイントですよね。

また、パンによって乗せるものを変えるということも多いと思いますが、ハード系パンに目がない私としては、流行りの甘い食パン達にはげんなりしてしまいます。

 

大きなお世話か(^_^;)

 

ということで寒い冬でもパン作りを欠かさない、あるいはご商売にしているという方も多いと思うのですが、そんな戦友の方々の中で、冬場はパン作りが難しくなるというお話をよく耳にします。

 

「なかなか発酵してこなくて時間がかかってしまう・・・」とか、「生地が乾いてしまってパンの伸びが悪くなる」とか、「なんとなく肌艶が綺麗にいかないし、ガサガサとしたクラストになる」というようなお悩みをよく聞くのです。

 

季節がら当たり前のようにも思える現象ではありますが、実際にはそれでは困りますよね。

特にご商売であれば仕方がないでは済まされないでしょう。

 

ということで、今更感もありますがとても大切なことですので、冬場のパン作りについて改めて説明しておきたいと思います。

 

冬場に気を付けなければならないこととは

 

パン作りにおいて、温度、そして湿度がとても重要であるということはどなたでもご存知のことでしょう。

それはなぜかといいますと、イースト菌というのは菌という微生物ですので、活動するには必ず水分が必要であったり、そして最適な温度と湿度がないと活発に発酵していくことが出来ないからですね。

パン作りにおいて重要なことというのはいくつもある訳ですが、捏ね方とか成形の仕方とか焼き方などのいわゆる技術的な要素によって様々な完成度になるのはその通りなのですが、それとは別にイースト菌による発酵という科学を知らずして作るパンというのは、これまたいくら技術があってもけして良いパンにはならないのです。

 

つまり、イースト菌が気持ちよく発酵活動を行えるような環境を整えてあげて、初めて理想的なパンができるのであって、そこをないがしろにしていくら技術を駆使しても、美味しいパンにはたどり着けないということなのです。

 

皆様がいつも行っている、何分で分割して何分で成形して何分膨らませて焼いて・・・と言う作業も、「温度は何度で湿度はどの位が最適環境なのか」ということがとても重要な訳で、ただ単に時間が経過すれば良しと言うことではない訳ですね。

 

そんなことは誰でも知ってるよ!!

 

と思われる方もいると思うのですが、知っているとやっているとでは大きく違うのがこの点なのです。

ご商売の方なら特にそうだと思うのですが、忙しくパンを作っていると汗をかいてきますよね。

身体はもうポカポカしてきますので、少し寒いくらいがパン作りの環境としては丁度良いわけです。

しかしイースト菌にとってはどうでしょう。

イースト菌が穏やかに過ごせる環境というのは、25~28℃くらいであり、特に最終発酵においては30℃~35℃くらいが理想となる訳です。

と言うことは、まさに真夏のような環境なのであり、私たちが気持ちよく作れる20℃前後の環境では寒いということになってしまうのです。

寒いということは、パン生地は適度には発酵してこない、あるいは乾燥肌になりやすい、そして結果的には発酵不十分な膨らみであったり風味であったりお肌であったりになってしまう可能性が高いのです。

十分に活動しきれなかったイースト菌というのは、ガス発生も不十分ですので当然伸びの悪いパンになります。

伸びの悪いパンと言うことは、パンの中に気泡が少ない状態でもありますので火の通りも悪くなります。

おまけに発酵に必要な糖があまり使われないがために、その分色付きも濃くなってしまい、

 

色がいつもよりも黒く、そして膨らみが悪く、肌がガサガサしていて、硬いパンとなってしまうのです。

 

ということを防ぐためには、温かすぎる程度の暖房、そして汗ばむくらいの湿気が必要となるのですが、暖房器具がきちんと揃っていない、あるいは暑いのがきらい、あるいは換気に重きを置いている工房などの場合は、どうしてもやや寒い環境でパンを作っているというのが実情だと思います。

 

解ってはいるが、この程度なら大丈夫だろうという勘と経験に基づいた判断だとは思いますが、どうしてもその分発酵時間が長くなったり、生地の温度そのものを上げる傾向があることも否めません。

 

発酵時間が長くなるということになると、お店に並ぶ時間が遅くなったり、出荷に間に合わなくなったりするわけですから、それを回避するために捏ね上げ温度を上げる方法をとられている方の方が圧倒的多数のはずです。

 

しかし、生地の温度を上げると尚更室温との温度差が生じてしまい、生地中心部は過発酵、生地外側は未発酵なんて現象も起きてしまって、結局大きさが違ったり色付きが違ったりと不安定なパンになってしまうことは回避できないのです。

 

それでいて「なぜこのような不安定なパンが出来てしまうのか???」と言う質問は相変わらず多いのであり、何となくそうだろうとは感じているものの、特に努力して室温調整を行おうとはしていないという人も多いのです。

 

パン生地の発酵環境に関して詳しく知りたい方はこちら

 

発酵室の環境をコントロールしていますか? - ベーカリーアドバイザーの部屋

 

 

パン作りにおいては、とにかく作る場所の温度と湿度と言うのが重要なのであり、冬場のパン作りの失敗のほとんどは発酵環境にあると言っても過言ではないのです。

 

そしてそんな中でも特に気を付けていただきたいのがこちらになります。

 

 ベンチタイムの発酵環境が最重要ポイント

 

分割を行った後にベンチタイムをとりますが、その際に生地を冷やしてしまうことで元気のないパンになってしまうという傾向が多々あります。

なぜなら分割した後の生地は小さいからで、それぞれがもろに外気に触れてしまい、「さぶ~~~」となるのです。

ですので、ホイロに余裕のある場合には28~30℃に設定したホイロに入れる、ホイロにゆとりがない場合にはオーブンの上、ホイロの上などの温かい場所でベンチタイムをとる、あるいはご家庭などではこたつの中に入れたり、食器棚の上の方に置くなどして、ベンチタイムで生地が絶対に冷えないようにしていただきたいのです。

このことを守るだけで、膨らみの良いいつも通りのパンが完成するはずです。

そしてもう一つとても大切なのが、絶対に生地を乾燥させないということですね。

どんなに温度を上げても、加湿器を使っても、成形している生地と言うのは丸裸です。

速やかに成形して速やかに発酵室へ入れるということを少しでも怠って、ちょっとトイレ・・・なんて言っている間に生地は冷えてしまい乾いてしまいますから、とにかく絶対に乾かさないにすることが最重要ポイントとなることを覚えておいてください。

 

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さあ、美味しいトーストも食べたことだし、今日は温度管理も完璧だったのでとてもいいパンができましたよ・・・

 

のそのあとはお片付けタイムがやってきますね。

そこで今回は、知っているのとやっているのとでは大違いなもう一つの見逃しポイントを紹介しておきたいと思います。

 

洗い物・・・きちんと出来ていますか?

 

で、出来ているでしょう・・・普通・・・なんて、若干不安に思われた方は要注意ですよ。

小麦粉やパン生地が付着したボールとかお皿とかカードというのは、実はとても厄介な洗い物なのです。

皆さん普通に洗剤をスポンジにつけて、アワアワして、そしてお湯で洗っていますよね。

ところがここで間違いを起こしている方が意外と多いのです。

というのは、パン生地とか小麦粉がくっついている入れ物にスポンジを当てると、入れ物についていたパン生地は取れますが、それは流されずにスポンジに移行していきます。

そのパン生地が付着したスポンジで、他の食器にパン生地を擦り付けていることになるのです。

一見きれいに落ちているように見えるかもしれませんが、光に充てて良~く見てみると、白いザラザラが頻繁に発見されます。

これをカレーで表現してみると解りやすいのですが、カレーを作った鍋や食べたお皿に、まだカレーがびっしり残っている状態でスポンジを当ててしまうと、スポンジはカレーまみれになりますよね。

そのカレーまみれのスポンジで他の皿をこすってみて下さい。

カレーまみれになりますよね(笑)

それと同じことをやってしまっているのです。

焼肉をした天板とかを次の日に洗おうとしたら、白い油がべったべたとくっついています。

その油に直接スポンジを付けてしまったら、もう何度洗おうと油は落ちてくれませんよね。

それはズバリ、油がスポンジにくっついた状態で何度こすっても、油を塗り広げているのに過ぎず、いつまでたっても油汚れはなくならないからです。

ということで何が言いたいのかと言いますと、油であれパン生地であれ小麦粉であれ、一度お湯でしっかりと取り除いてからスポンジで洗うことが大切なのであり、汚れの大半(目で見えるもの)は取り除いた後、洗剤を付けたスポンジで細かい汚れとか雑菌を洗い流すことが洗い物と言う作業なのだということを知っておいていただきたいのです。

 

今更のように聞こえるかもしれませんが、先日職場で全員に洗い物をしてもらいましたが、全員きちんとできていませんでした。

洗った後の食器を全員でよ~く見てみましたが、見事に生地や粉が付着していました(笑)

 

「でもこの程度なら布巾でふき取れば取れるのではないですか?」

 

と言う意見もありましたが(笑)・・・笑いすぎか、この場合布巾でふき取ると確かに食器のパン生地は取れますよね。

しかしそのパン生地は一体どこへ消えてしまったのだと思いますか???

そうですよね、布巾に移っただけの話なので、その布巾で別の食器にすべてパン生地を塗り広げていくことになる訳です。

 

この現象って何かに似ていると思いませんか?

 

そうなのです、実はウイルスというものも、このようにして次々に感染していくのであり、それはドアノブであったり、フェイスタオルであったり、パソコンのキーボードであったり、車のハンドルであったりと、モノや手を介して次々に広がってしまうのです。

 

つまり、きちんと洗い物と言う作業を知ることは、他に汚れや菌を移さない、感染防止対策でもあるわけです。

 

マスクをしたり手洗いをきちんと行っているつもりでも、ご家庭のあらゆるものには同じ布巾を介して様々な汚れや菌が塗り広げられている可能性があります。

その一見見えない菌を手に持ちながら、色々なものに触れていくのが人間なのであり、やはり洗い物と言う作業においてはそこできちんと菌をシャットアウトする気持ちで行うことが大切であると考えます。

 

食の安全性には気が向いているようでも、本当の安全は意外なところから脅かされていることが多いのだということを知っていただき、美味しいパンを本当に安全な器材・器具でお客様、ご家族に提供できるようにしたいものですね。