「上白糖」と「グラニュー糖」 製パンには、どちらの砂糖を使えばよいのでしょうか?
意外と多くいただく質問です。
しかもパン屋さんから・・・(笑)
まずはそれぞれの特性を見てみると・・・
グラニュー糖の特性とは?
グラニュー糖は、最高純度の糖液から作られる無色結晶状の砂糖で、ショ糖純度が非常に高く、転化糖をほとんど含まないため、サラサラとした光沢を持ち、甘味にくせがありません。
一般家庭で最も多く使用されている砂糖と言われていますが、その一番の理由は、ベトついたり固まったりせず、保存性にすぐれているからだと思われます。
料理はもとより、コーヒー紅茶にはもっぱらグラニュー糖ですよね。
専門的に言うと、メラノイジンの影響が弱いので、安定した焼き色が求められるパンや、特にお菓子類のように砂糖の配合量の多い食品には、グラニュー糖が適していると考えられます。
上白糖の特性とは?
しっとりとしていて、きめが細かく、甘味にも適度のコクがあります。
日本では最も生産量が高く、砂糖全体の約半分を占めています。
グラニュー糖と違って、しっとりベタベタとしているので、空気に触れるとすぐに固まってしまうため、保管には注意が必要です。
先にふれたように、上白糖には転化糖という果糖とブドウ糖の混合物が添加されているため、メラノイジンの影響が強く、焼成時に非常に焦げやすいという特徴をもっています。
したがって、菓子全般的にあまり使用されていません。
しかし製パンでは、どちらかというと上白糖の方が多く使用されています。
なぜでしょう?
それは、転化糖によってベタベタとした状態の上白糖が、パン生地中においては保湿性を発揮し、焼成後のパンの水分の蒸発を食い止める働きをしてくれるからなのです。
また、製パンにおいては、菓子に比べて砂糖の配合量が少ないため、少量の砂糖でもしっかりとした焼き色がつくように、上白糖を使用することが多いと言えるでしょう・・・
とまあ、型通りの説明だとこのようになりますが・・・解かりにくいですね(笑)
要するに、上白糖とグラニュー糖には、それぞれ向き不向きがあることは確かです。
しかし、この食品にはこの砂糖といった明確な使用規準はありません。
どのパンにどちらの砂糖を使ったからといって、まったく違うものが出来るわけでもありません。
あくまで作り手の好みの問題で使い分ける程度の違いだとの認識でよいと考えます。
ただし、菓子の場合はその配合量によって、焼き色がまだらになることがありますので、 砂糖の配合量の多い菓子の場合は、グラニュー糖を使用したほうが製品価値が上がると思います。
また、聞きなれない ”転化糖” とは何でしょう?
砂糖を使っていく段階で、この転化糖を良く理解していないと、使い分けに苦しみますので、少しややこしいですが憶えて下さい。
そもそも砂糖というのは、ショ糖という成分で出来ています。
このショ糖とは、ブドウ糖と果糖が合体して出来た糖なのです。
ブドウ糖と果糖が合体状態の時をショ糖と呼び、それぞれに離れると、つまり合体がほぐれると、ブドウ糖と果糖に戻ります。
この合体というか変身というか、これがほぐれる、つまり分離することを ”転化” と呼び、転化されたブドウ糖と果糖の事を ”転化糖” と呼ぶのです。
ややこしいですね~(笑)
しかし、これを知っているとちょっと自慢できますよ(笑)
そして肝心なのが、この転化糖というのは、上白糖にしか入っていないということです。
ほとんどの砂糖がショ糖で出来ているのに不思議ですね!
しかしこれは、砂糖の製造段階で起きるもので、グラニュー糖には転化糖が含まれません。
転化糖というのは、非常にべたべたしていて、甘味が強く、すぐに焦げてしまう性質を持っています。
したがって、砂糖の配合量の多い菓子ではグラニュー糖を使い、多くないパンでは上白糖を使うというのが一般的な論理なのです。
しかし、パンの場合は砂糖の配合量が小麦粉対比で5%から25%程度ですから、結論としてはどちらを使っても、特に焼き色に変化は見られないと思います。
上白糖を使った方が、生地がべとつくとしたら、それはミキシングが適切ではないのです。
上白糖を使った方がパンのしっとり感が長持ちするというのは、ほんの少しの差でしかありません。
グラニュー糖で仕込むと、品の良い甘さになるという方がいますが、その方の舌は、きっとリトマス試験紙のように敏感なのでしょうね・・・うらやましいです(笑)
お砂糖の効果って?
また、パンってすぐに硬くなりますよね~
商売をしていて、今日作ったパンはいいところ明日までしか販売できないという現実に悩まされている方も多いと思います。
洋品店がうらやましい (;一_一) 宝石店がうらやましい (;一_一)
だって、今日売らなくても腐ったりしないのですから・・・
そんな気持ちになってしまう私は、パン屋失格かな??
パンでも弁当でも、すぐに腐ってしまうものだからこそ、毎日毎日買ってもらえる・・・
宝石は腐らないから、めったに同じ人が買う事は無い。
経営的に見れば、そこが日配品と言われるパンの魅力なのは解りますよ!
しかし、本日中に全てを販売するのは不可能なだけに、廃棄と言う何とももったいない事態にもなる訳で・・・
こんなにエコが騒がれる時代に、はたして廃棄が頻繁に行われているパン屋さんは、正しいのでしょうかね??
てな訳で、パンと言う商材は、基本的には日持ちしない部類の食べ物であると言う事は、皆さんもご存じでしょう。
パン屋さんは、そんなパンを如何に日持ちさせる事ができるか???
そんなテーマを永遠の課題として、日々苦悩していますよね。
では、パンを日持ちさせるために必要な材料とはいったい何でしょう?
それはズバリ、お砂糖なのですね!
一番身近で一番お馴染のお砂糖が、実はパンの日持ちに重要な関係があるのです。
パンを作っていると、色々な原材料を使います。
それらの原材料には、決まって賞味期限というのが存在しますよね。
もちろん、原材料に限らずありとあらゆる食べ物には、賞味期限と言う物があって、2~3日で食べられなくなる物から一カ月位は日持ちする物まで色々あります。
パン屋では、ドライフルーツなどが日持ちする方ですよね!一年位は・・・
レトルト製品も日持ちしますね!やはり一年位ですが・・・
では、お砂糖はどれくらい持つか知っていますか?
実は、お砂糖は食品であるにもかかわらず、賞味期限がないのです。
と言う事は、腐らない・・・のか???
そうです、お砂糖は腐らないのです。(固まったりはしますが)
ちなみに塩はもっと腐らないですけど(笑)
このお砂糖は、パンに配合されるともちろん甘みをつけてくれますが、それだけではなく老化を遅らせてくれるという作用もあるのです。
つまり、砂糖を多く配合した方が、よりパンは日持ちすると言う事になります。
ですから、フランスパンより食パン、食パンより菓子パンの方が日持ちする訳ですね。
すると、つまりは甘いパンの方が甘くないパンより日持ちする・・という原理になります。
どうしてか???
それにはまず、パンがパサついていく原因を知らなければなりません。
そもそもパンとは小麦粉を加工した食べ物です。
小麦粉を使った食べ物の代表には、例えば うどん・ラーメン・パスタ・ケーキ・クッキー・そしてパンがあります。
これらはどれも、あまり日持ちがしまいものばかりですよね!
美味しいのに (>_<)
しかし、同じパスタでも ”茹でる前のパスタ” はどうでしょう?
これは驚きの3年以上は持ちますね!
何で???? 勘のいい人ならもうお解りですね!
それは水分の含有量が物が腐る事に関係しているからなのです。
茹でなければ3年以上もつ小麦製品でも、水分を含む事によってすぐに腐ってしまう食べ物になる。
これは、食品を腐らせる原因菌である ”腐敗菌” が、食品中の水分を腐らせていく菌だからなのです。
つまり、食べ物が腐っていくには、その食べ物の中に腐敗菌が大好きな水がある事が条件となるのです。
したがって、いわゆる乾麺などのように ”乾燥” させた食品には、腐敗菌が大好きな水分が少ない為に、腐りずらいと言う訳なのです。
この腐敗菌と言うのは、食品中の水分が30%から60%含まれるものが大好きなのです。
まさにパンやうどんなどは大好物と言う事になりますね。
しかし、そこに砂糖が加わると、その働きにより食品中の水分がデンプンなどと結着して、腐敗菌の大嫌いな結合水という水に変わってしまうのです。
(ちなみに腐敗菌が大好きな水の事を自由水と言います。)
こうなると、腐敗菌は自由に繁殖できなくなり、結果、老化が遅れる訳です。
このような砂糖の力を、最大限に生かしている食品の代表といえば・・・ ジャム がありますね。
そもそも、例えば苺などは、そのまま生では数日しか持ちません。
しかし、それを砂糖で煮詰めると、数年もつ食品に変わってしまいます。
以上のように、砂糖は一番身近な材料でありながら、パンの日持ちに大きく貢献してくれているのです。
そう理解して砂糖の配合量を考えると、今までよりもレシピに広がりが出来るでしょう。
お砂糖以外にもハチミツや油脂など、パンの日持ちに貢献してくれる原材料はまだまだありますし、製法や発酵熟成などでもパンの日持ちは大きく変わります。
しかし、砂糖と言う身近な調味料が、甘さだけではなくパンの老化防止にも一役買っているんだなということだけは覚えておいてほしいと思います。