やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

自分は何を、どこを目指すべきなのか悩んだときは・・・

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皆さんこんな感じの刷毛使ってませんか?

大手が運営する焼き立てパン屋さんでは、このタイプの刷毛しか使えません。

なぜなら、毛だと抜けて異物混入の恐れがあるからです。

ご家庭でも何気なくこのゴム製の刷毛を使われている方も多いと思うのですが、衛生面ではまさにバッチリ安全ではあるものの、こんなゴムに卵がしっかり絡むわけもなく、ましてや生地に対してやさしいはずもなく、結果この刷毛で塗ることによってせっかくふんわりと膨らんだパン生地の表面を塗りつぶしていることが多いのです。

そんな姿がこの中央のあんぱんです。

 

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両サイドも細かく言えばダメージを受けていますが、表面がのっぺらなあんぱんが一番目立ってしまうのです。

せっかくここまでは完璧な生地だったのに、焼く前になってまさか自分で潰してしまっていたなんて・・・と嘆く人は非常に多いのです。

この刷毛を使って、ナイーブな生地の表面に何かを塗るというのは大変技術を要しますので、慣れないご家庭ではやはり毛で出来た柔らかいもので塗っていただいた方が安全かと思われます。

 

 スーパークリーン刷毛山羊毛 Y-40

 

ただし、毎回必ずしっかりと荒い、そして漂白してから乾燥させておかないとすぐにカビてしまいますのでご注意ください。

一見安くて便利でかわいい道具があったりしますが、意外にもそれがパン生地にダメージを与えていることがありますので、自分の技量だけの責任ではなく、道具が悪い場合もあるのだということだけは知っておきたいものですよね。

そんな、「なぜ自分のパンは今一きれいにできないのか?」という、技術的な、あるいは経験不足などからくるお悩みもさることながら、「いよいよ商売として始めよう」としている、あるいは「心機一転改装して新たな道を進もう」と考えている方々の中には、「どのパンで勝負していくべきか決めかねている」という方々がいらっしゃいます。

パン屋の開業はとてもお金がかかります。

やっぱこっちにしよう・・・みたいに簡単に方向転換できるものではありませんので、初めが肝心だと大いに悩む人がいて当たり前だと言えるでしょう。

さてそんなとき、何を指標にして判断していけばよいものなのでしょうか?

 

定番か、斬新さか、流行りか・・・どの道を進むべきか


美味しいパンだ・・・と感じるものの中には、バカうまい、普通にうまい、品のあるうまさだ、なぜかうまい、食べたことのないうまさだ・・・などなど、食べる人によって様々な表現方法が用いられると思います。

まずいパンの場合も同じで、ゲロまずい、なんだこりゃ、腐ってる?、何がしたいの?、ありえない・・・などなど、自分の思い描いた味とのギャップがあると、このような表現になることもあろうかと思います。

そもそも人の好みなんてそれぞれ違いますから、すべての人に美味しいと言ってもらえることなんて、ほぼないですよね。

だとしたら、私たちはどこに向かって、何を目指して、誰に向けてパンを作っていかなければならないのでしょうか?

一般的に好んでもらえるようなものを作るべきなのでしょうか?

例えるなら、スーパーでもコンビニでも焼き立てパン屋さんでも、ほぼどんなパン屋さんでも人気があるであろうソーセージを乗せた柔らかいパン、クリームたっぷりの白くて柔らかいパン、そして定番中の定番であるカレーパンにメロンパン。

これらのパンを品揃えしていないパン屋さんが、はたしてあるでしょうか??・・・というくらい一般化された人気商品群ですよね。

有名店であれ、人気店であれ、どのような焼き立てパン屋さんでも、この品揃えだけは鉄板だと言えなくもないでしょう。

そしてすべての大手のパンも同じくですね。

 

大手のパンというのはほぼほぼ同じような種類が揃えられていると思いませんか?卵にツナにベーコンにコーン、そして焼きそばにソーセージにカレーにチーズ、ヤマザキであろうとパスコであろうとフジパンであろうと、皆これらがメインですね。そして大きなデニッシュやドーナツなどなど、メーカー名を見ながら勝っている人がいるのかな?というほど、皆同じような商品構成になっています。何年たってもこの定番化からは逃れることが出来ずに、パンを少し柔らかくしてみたり、大きくしてみたり、白く焼いてみたりとほんの少しは改善しているように見えて、実は何十年もの長きにわたってこれらのパンの定番化から脱却できずにいるのです。それくらい客の志向を変えていくというのは難しいものなのでしょうね。

 

そう思って別の切り口をということで、違うジャンルのパンを品揃えするも、結局は撃沈してしまい、これらのパンを品揃えせざるを得なくなってしまったお店もあることでしょう。

新しくお店を開かれる方々からの相談で、一番多いのがこの点でもあります。

安定を取るべきか、それとも斬新さで挑戦するべきか、はたまた今流行りの食パン専門店やコッペパン専門店にするべきか・・・大いに悩むところですよね。

ご家庭でしかパンを作らない人であっても、なかにはハード系を好むご夫婦もいらっしゃるようですが、たまにメロンパンなどを作ろうものなら、子供がその時ばかりは飛びついてくるので悲しくなりますというお話もよく聞きます。

言うなればこの鉄板商品達というのは、今の時代の、そして日本のパン食文化の代表であることだけは確かでしょう。

メロンパンが嫌い、あるいはカレーパンが嫌いだと言う人には今まで出会ったことがありませんが、皆様の周りにはいますでしょうか?

ならば何も迷うことなく、これらのパンをメインにして、そしてさらにグレードアップしたり、それなのに意外と安価で販売したりができれば、ほぼ成功間違いないではないか・・・

いや、でもしかし、それではどこまでいっても右ならえでしかなく、競合店には勝てないのでは・・・

そのような葛藤は、この業界にいれば常に付きまとう永遠の謎なのかもしれませんね。

 

では飲食業界はどうでしょう

 

では、料理の世界ではこの辺りをどのように考えているのでしょうか?

例えば、有名レストランと大手チェーンレストランでは、私達のような大手製パンと焼き立てパン屋さんの販売戦略の違いみたいなもので悩んでいるものなのでしょうか?

数は少ないですが、私の知る限りのレストランオーナー達は皆一様にこのように語ります。

それは、「外食チェーンは明確に競合であり、常に意識している」というのです。

それはそうですよね、知り合いの店のハンバーグよりも、びっくりドンキーの方が安くてうまいと感じることは実際にありますから・・・スマン( ;∀;)

しかしながら、料理の世界と言ってもミシュランを目指すようなお店の場合や、高級ホテルなどでは果たして外食チェーンを意識したメニューになっているものでしょうか?

そのあたりは詳しく調査することは出来ませんが、知りうる限りの情報で考えますと、全く別の道を行っているような気がしますね。

料理の世界というのは、いわゆる食材そのものの価値が違いすぎるものが多く、販売価格が軽く10倍以上になるような食材が存在しますよね。

つまり、一般的に美味しいとされるものを安価で提供することを目的としたお店と、普段は食べられないような高級食材を使った料理を提供できるお店とが共存できる業界だとも言えるでしょう。

その点パンの場合は、使用される食材そのものは非常にシンプルであり、その分製法とか配合とか技術力にウエイトがかかる訳です。

料理全般のなかには、当然ライスと同じようにパンも含まれてきますので、料理というのは飲食物全般のことを指し、パンの場合はその中のジャンルの一つでもあるわけですから、やや世界が狭いのは当然のことでしょうね。

しかし料理も各国で全く違うように、パンもその国によって好まれるものは全く違いますので、今後のことを考えれば、いつまでもメロンパンやカレーパンが定番でい続けられるかどうかは解りませんよね。

また、パンという食べ物にはある程度の価格帯の制約が付きまといます。

どんなに特別なものを作ったとしても、一個1000円のメロンパンが大ヒットするとは考えずらいですし、それが例えば500円だったとしても、それが定番になるというのは少々考えづらいでしょう。

そう考えますと、比較的シンプルな原材料を使って、ある程度の価格帯の制約の中で個性を出し、そして人気を獲得しなければ成功できないパン屋さんというのは、なんと繊細な仕事なのだろうと考えてしまいます。

さてそんな中で、皆様はどのような方向性で進むべきか、何を強みとして運営していくべきかが明確になっていますでしょうか?

それとも大いに悩み、先が見えないとか不安がよぎるような毎日を送っていますでしょうか?

もしそうだとしても、実際に私にできることはアドバイスの域を超えることは出来ません。

今後も個々の悩みとぶつかりながら、励まし続けることぐらいしかできませんが、自分自身の経験から言えることは、「どうせ悩むなら前向きに悩む」ことが大切ではないかと思っています。

悩みのない人はいないと思いますし、その中身も大小も人それぞれだとは思いますが、肝心なのは悩んだ分前に、そして上に登っているかどうかということではないでしょうか。

今よりも一秒でも過去には戻れない訳ですから、それまでの経験不足だとか、それまでの実績だとか、ああしておけばよかったのかもしれないなどの、過去の出来事や考え方の判断などを悔いるようなことを考えても、それはこの先一つも生きない分析にすぎず、ただのストレスしか生まない行為になってしまいます。

むしろ、今この瞬間から何をどうしようと決意したとしても、そこから今が始まるのですから、行動した分確実にプラスになり、前進し上昇していくことにつながる訳です。

 

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成功者に宿る特徴とは

 

きれいごとを言っているように聞こえるかもしれませんが、成功者の毎日というのは非常に地味でクソ面白くもないような生き方をしている方がほとんどです。

クソは失礼かもしれませんが、何が楽しいの??そんな生き方でいいの??と言いたくなるくらい毎日毎日同じことをコツコツコツコツと行い、考えることと言ったらどうしたらもっと自分のパンが美味しくなるかということだけで、休もうとか楽がしたいとかくよくよしたりとか豪勢な生活がしたいとか、そんな誰しもが金儲けに走りたくなるような世の中にあっても、お客さんの美味しいの言葉だけが欲しくて生きているような人達なのです。

解りやすく言ってしまえば、努力が半端ない人はほぼ成功するということでしょうか。

私のようにすぐに四の五の考えてしまい、過去を悔い、自分の能力の限界ばかりを考えてしまうような身勝手な人間には、パンの神様はあまり力を貸してくれないような気がしていました。

私の師匠も、寝ているとき以外はパンのことしか考えていませんでしたし、いや、寝ていても閃けばすぐに工房に向かうような人で、恐らくそれは当時だけではなく今現在も同じでしょう。

その後に知り合ってきた成功者とか達人と呼ばれるような人達はみな一様にそんな感じで、まるでパンに取りつかれているような生き方をしています。

あきらかにそれは無理だろうというような出店をしたとしても、確実に成功させてしまうのもそのような方達であり、やはりパンの神様が協力しているとしか考えられないのです。

ですので、そんな方々をたくさん見てきた私から、自分の目指す方向性や、自分の作るパンの美味しさに納得ができないという人に言えることがあるとすれば、「努力が中途半端」なのかもしれないと言うことに尽きます。

私自信も、とかく方策とか分析とか情報収集に目が行ってしまう性格ではありますが、それでも人一倍多くのパンを捏ね、そして成形し、そして焼いてきた実績でこの心と体が出来ていると思っています。

つまり、半端なくパンを作り続けてきたこの手には、必ずパンの神様が宿っていると思っているのです。

ですので、この手から繰り出されるパンがお客様を喜ばせない訳がない・・・そんな根拠のない自信だけはあるのです。

皆様はいかがですか?

本当は自信だけはお持ちのはずです。

ただしかし、唯一、私の知る限りの成功者や達人たちと私には大きな違いがあります。

それは、みなさんパンが何よりも好きで、パンしか食べないと言っても良いくらいパン食を愛していると言う点です。

私は自分が食べることよりも、作ること、そして食べた誰かが感動してくれることに喜びを感じていますので、恐らく達人たちに宿っている商売の神様と、私の手に宿っているかもしれないパンの神様は違うのかもしれませんね。(笑)

これまた私の知りうる限りですが、相談をくださる悩める方々は皆、パンを相当愛していらっしゃる。

ということは、確実にパンの神様は応援体制で待機しているはずですから、あとは半端ないパン作りをがむしゃらに実行するのみだと思いますが・・・いかがでしょうか。

好きこそものの上手なれ、これこそ真実だと思います。

たとえ決めた道が多少的外れだったとしても、方向転換できる寛容なこころ構えさえあれば、あっちいったりこっちいったりするかもしれませんが、最後はきっと満足できると思います。

 

いかなる道を選ぼうとも、ただひたすら美味しいの言葉をもらうためだけに頑張ってまいりましょう。