やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

パンの表面がつやつやしないのはなぜ??

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こんな質問をいただきました。

 

パン教室にも数年通い、色々なパンが焼けるようになったのですが、どうしてもパン屋さんで売られているようなパンになりません。

肌が汚いと言うか、表面がガサガサで、艶がありません。

パン屋さんでは何か艶を出す物を塗っていると聞いたのですが、塗らないと駄目なのでしょうか。

 

 

これも、最も多い質問のひとつですね。

と言うよりも、それに気づいた時点で十分ご立派です。

なぜなら、パン職人であっても、あまり完成品について疑問を持たない人が多いからです。

良くない状態を感じ取れなければ、それより良くなる事はあり得ません。

ですから、この疑問を持った時点で、すでに美しいパンが完成する日は目前なのです。

よ~く理解して、美しいパンを作っていただきたいと思います。

 

ではまず、どうしてパンの肌に艶が無いのかを検証していきましょう。

 

今回の場合は、拝見したレシピには何の問題もありませんでした。

しっとりとフワフワなロールパンになるはずのレシピでした。

しかし頂いた画像のパンは、たしかに少し残念な肌になっておりました・・・

でもどうしてもレシピが気になりますよね!

または、小麦粉が悪いのか?????とか。

考えたくなりますね(*^_^*)

しかし、気を悪くしないで聞いてほしいのですが、パンの表面が粗いのは、ズバリ生地の取り扱い方が悪いからなのです。

これが焼き菓子なら、ボールの中でヘラやホイッパだけで作る訳ですから、あなたの手がどうのと言う事はなかったかもしれません。

しかし、パンの場合は生地の取り扱いによって完成度は大きく違ってきてしまうのです。

家庭でもミキサーを使ってパン生地を作っている人が多いと思います。

ミキサーの中のパン生地は、けっこう痛めつけられているように見えますね。

あれに比べれば、多少の取り扱いの悪さは大したことは無いと思いますよね。

が・・・・実際はそうではないのです。

生地作りの段階では、まだ発酵が始まっていませんね。

それを発酵させて、いよいよ分割しようとする時には膨らんでいますよね。

この膨らんでいるというのは、パン生地の中に無数の風船が入っている物とお考えください。

生地作りの段階では無かった風船が、発酵が進むと大量に生地の中に生まれます。

だからこそパンは膨らんでくれる訳ですが、その風船一つ一つの中に、旨味や味わいが詰まっているのです。

そしてガスも・・・

分割・成形をしていく段階で、いかにこの風船を割る事無く、無事に焼成までたどり着く事が出来るか。

パン作りにおいての最も重要で、かつ技術を必要とする難関が、この分割・成形なのです。

大抵の場合、ここで風船をたくさん割ってしまうことで、その後にふんわりと膨らむ事が出来ないと言うのが現実なのです。

実は、私の知り合いにもパン教室の講師が何人かいます。

ホームメイド協会の講師もいます。

しかし、いづれの方々も見るに耐えない生地の扱い方なのです。

・・・・こりゃ見てたら怒られるわ(~_~;)

 それでよく教えられるね~・・・・な~んてついつい言ってしまう時もある位です。

皆さんどうしても、より多くのレシピを紹介しよう・・・とか、 フィリングにこだわってみたりとか・・・・ その姿勢には頭が下がるのですが、最も肝心の生地の取り扱いがまるで出来ていないのです。

と言う事は、家庭の主婦がそれ以上に生地の取り扱いが上手いとはとても考えられませんよね。

とても失礼なことを言っている??・・・のかも(汗)

もちろんこの辺の技術は感性が重要だと思いますので、もともと丁寧な性格の方は、初めから取り扱いが上手だったりもします。

しかし実際には、教える側がその程度なのですから、生徒にそれ以上を要求する事は出来ません。

 

・・・なんか大勢を敵に回している気がしてきたぞ~(~_~;)

 

 でもここが核心なのです。

 

パンの善し悪しは技術で決まるのです。

残念ながらレシピではないのです。

まったく同じレシピでも、作る人の技量でまるで違ったパンになるのです。

その事だけは、声を大にして・・・・言うと怖いので、小さくなってしまいますが・・・・・ ホームメイドでパンを作る場合、風船がたくさん割れてしまうと言う事を想定して、グルテンの多い小麦粉を使う事が多いようです。

初めから風船の数を多くしておけば、多少割れても何とかなると言う理屈でしょうが、一般的にはそれでも構わないと思います・・・・が しかし、どうか目をそむけないで、生地が最適な状態でいられるような分割・成形技術を目指してほしいと私は思います。

 

生地を丸めていて、ビリっと切れる瞬間を感じ取って下さい。

 

 

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このように、表面が荒れた状態になったりしていませんか?

 

これは丸めているところですが、このような生地の扱いしかできない状態で、この後成形をしたりしていくだとすれば、さらに状態は悪化してしまうことでしょう。

こうなってしまっては、パン屋さんのようなパン・・・には残念ながらならないでしょう。

 

 

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取り扱いが良かった生地というのは、このように薄皮が一枚張られたような、つやつやとした状態でなければなりません。

ご自分が丸めた生地をよ~く見てみて下さい。

その時点で肌が荒れていませんか?

とくに下部が荒れていませんか?

表面に一枚の薄皮が張ったようになっていますか?

人間の手のひらは実に敏感です。

その気になれば、必ず生地を荒らす事の無い取り扱い方が出来るはずです。

パン生地の中の風船は、生地が捏ね上がってから生まれ、その後丸めたり引っ張ったりする事で、どんどん増えていきます。

生地に力が加わる事で、一つが二つに分散され、100が200に分散されというように、最後には幾千万の風船が生まれるのです。

分割・成形において、この風船を更に増やしていける手と、壊してしまう手があります。

さあいざ焼こうと言う時に、どれだけの風船が残っていて、その風船の質が滑らかであったならば、どのようなレシピであれ、最高に美味しく美しいパンになるのです。

その逆が今回ご質問にあるような状態のパンとなる訳です。

パン屋さんとて、秘密の艶出し液を持っている訳ではないのです。

いい所塗り卵をしているか、艶出し用の油を塗っている程度です。

しかし、もとより表面がガサガサならば、いくらオイルを塗っても艶は出ませんね。

風船がたくさん残っているパンは、肌触りが良くふわふわしています。

しかし、風船が割れてしまったパンは肌触りも悪い上に食べても今一。

しかも、すぐに硬くなってしまいます。

どのように生地を取り扱ったかによって、こうも違うパンになってしまうなんて・・・もうやめた(涙)。

なんて声も聞こえてきそうですが、それがパン作りの難しさでもあり醍醐味でもあるのです。

プリンやゼリーを皿の上に置いて左右に振ると、あのぷるるんとした感触が目で見ても味わえますね。

パン生地も、プリンやゼリーを触るかのごとく丁寧に扱ってあげてください。

技術を文面にする事が出来ないのが残念ですが、表面が荒れていることに気が付けただけでも十分ですし、必ず改善していけます。

メールや電話でいくらお伝えしても、実際に見ていただくのとはまったくニュアンスが違ってしまうのがこの点なのです。

しかし、私がいつも一緒に仕事をしているスタッフの中にも、生地の取り扱いは最低と言う人がいます。

今まで一緒に仕事をしてきた人達の中にも、生地の取り扱いなんて二の次・・・と言う人はたくさんいました。

そう考えると、教えてもらえば出来る・・・という事ではないのかもしれませんね。

感じ取れる人には必ず出来る・・・・・ そう言う事なのかもしれませんね!

 

パン作りというのは、レシピがあって原材料があって、そして様々な製法がありますよね。

今回は生地の取り扱いについてのみ触れていますが、発酵環境とか焼き方にも様々な注意点があることは確かです。

しかし、どうしても最終的にパンの良し悪しを決めるのは、やはり取り扱いなのです。

今回はパン作りが楽しくなくなるよな話で終わりになりますが、作る私たちの気持ちとは裏腹に、パン生地の気持ちになって考えてみると、

 

 

ポイント

パン作りのあらゆる工程のなかで、いかに風船を増やしながら、生地が気持ちよく膨らめるような状態にしてあげることが出来るかどうかで、パンの良し悪しは決まってしまうのです。 

 

 

と、生地が訴えているような気がします。

そんなことに少しでも気を使いながらおこなうだけで、きっと理想のパンに近づいていけるものと信じています。