やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

発酵種と中種は違うの・・・??

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キメの粗い天然酵母パン

 

こんな質問をよくいただきます。

 

発酵種と中種の違いがよくわかりません。

また発酵種を使用する割合は決まりがありますか?

イーストの量もよくわかりません、教えてくださいませんか??

 

この方の場合は、すでに発酵種を使ってパンを焼かれているとの事。

ただ、発酵種をどのパンにどの位入れるべきなのか悩まれているようです。

また、入れる発酵種の量とイーストの量の関係を聞きたいということでした。

ということで、今回はそれらを順に説明してまいりましょう。

 

 

発酵種と中種はどう違うのか?

 

 

中種と言うのは、配合の一部を使って一度生地を作り、それを発酵させておく事を指します。

発酵後に残りの配合を入れて、またミキシングしていきます。

これを本捏ねと言います。

つまり、どのような配合でも、一度にすべてをミキシングする事をストレート法と呼ぶのに対して、中種と本捏ねの二回に分ける事を、中種法と呼ぶのです。

 

詳しくはこちらをご覧ください。

 

sizuasa.blog.fc2.com

 

ストレート法の場合は、小麦の香りを生かしたいパン全般に使われる事が多く、他方中種法というのは、よりしっとりとフワフワに仕上げたい時に使われる製法です。

現在最も多く中種法が使われているパンと言えば、食パンと菓子パンだと思います。

しかし、実際には焼き立てパンの店ではほとんど中種法は使われていないのが現実です。

それは、中種は時間がかかるからですね。

では、中種法を使っているパン屋さんはどこにあるのかと言えば、それは大手の製パン工場なのです。

機械は何時から仕事をしても文句いいませんから(笑)

だから大手の食パンは意外と日持ちするのですね。

中種の発酵時間に決まりはありませんが、一般的には2~3時間程度発酵させ、その後に残りの配合を入れて本捏ねを行います。

したがって、かなりの時間と手間がかかる事になりますが、その分完成品のしっとり感は、ストレート法とは比べ物にならない程の柔らかいパンになるのです。

しかもなかなか硬くなりません。

この技術をマスターして家庭で生かす事が出来たら、それはそれは素晴らしいパンが完成する事でしょう。

時間がかかる分、間違いなくキメ細かく、しっとりとしたパンが焼き上がりますので、ご家庭では是非一度は実践してみてほしい製法です。

上記の食パン画像は天然酵母で作ったものですが、キメは荒いですがしっとりもちもちとしています。

クラム(パンの内層)もみずみずしいですよね。

しかし、イーストで作ったパンと天然酵母で作ったパンというのは、味や香りもそうですが、やはりクラムもクラスト(表皮)も独特な表情になるのですぐにわかります。

どちらが良いかは好みの問題ではありますが、色々と作っていると配合とか画像を見ただけで風味が解るようになりますよ、きっとあなたも。

 

 

次は発酵種です。

 

発酵種とは、発酵させた生地の事です・・・・

ってそりゃそうだけど(~_~;)

フランスパンようなシンプルな生地の一部をビニール袋に入れ、冷蔵保管して翌日作るパンに配合する。

それを発酵した種を入れた製法・つまり発酵種法と呼んだりします。

別名老麺ともルバンとも呼んだりしますが、別にきちんとした定義がある訳ではないのです。

発酵種専用のレシピで作った物だけを発酵種と呼ぶのではなくて、それがフランスパンのレシピでも食パンのレシピでも構わないのです。

それを、冷蔵庫で保存して翌日以降に使用する事全般を、発酵種法と呼んでいるのです。

少し解りにくいかもしれませんが、生地の全部を冷蔵庫へ入れれば冷蔵法となるのに対し、冷蔵した生地を添加する、つまり低温発酵した生地を違うレシピに加えることで、その効果を得ようというのが、種として発酵した生地を使う発酵種ということになる訳ですね。

冷蔵庫で保管するのは、当然常温では生地の発酵力が力尽きてしまうからでもあり、常温で保存しておいたらしわしわベトベトの生地になり、使用不可能になってしまうからです。

冷蔵保管された生地は、イーストがゆっくり活動するので発酵力が衰えず、さらに熟成が進む事で芳醇な香りがプラスされます。

また、生地のつながりが非常に強くなり、いわゆる弾力のあるパンが完成するのです。

とは言え、例えば高配合のパン生地を発酵種法として使用した場合、それをフランスパンに添加する事は出来ませんよね。

それに、食パンであってもそうですが、 油脂も卵も含まないシンプルなパンを作ろうと思った時、発酵種にこれらが入っていたら、意図とは違うパンになってしまいますね。

ですから、発酵種としてどのようなパンにも配合できるように、フランスパンのようなシンプルな配合で作っておけば用途が広がるであろうと考えられている訳なのです。

中種とは違って、発酵種は単独で存在していますから、どのようなパン生地にも添加する事が出来るという利便性があります。

ややこしくなるかもしれませんが、中種法の中にも発酵種を入れたりするのですよ(笑)

 

またこんがらがっちゃうかなこりゃ?????

と言う事でまとめますと、

 

まとめ

中種とは製法の事で、ミキシングの際に配合を二回に分けて仕込む、時間はかかるけどとてもソフトなパンが出来ると言う素晴らしい製法。

発酵種とは、シンプルな配合の生地を冷蔵保存しておいて、様々なパン生地に添加して旨味をプラスする事の出来る、いわば ”ダシ ”のような生地の事。

さらには、中種の中に発酵種を入れる事で、これまたソフト感プラス、ダシ入りの超美味しいパンになる。

 

と言う事で、お解りいただけましたでしょうか(*^_^*)

 

 

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大好きなヘルンヘン

ちなみに、このようなふんわりとさせたくない、カリッとした食感を楽しみたいパンに発酵種をしっかり入れてしまいますと、当然ながらしっとりしてしまいます。

ですので、あくまでふんわりしっとりさせたいパンにお使いくださいね。

 

発酵種をどれくらい入れたらよいのか?

 

 

発酵種の量に関しては、作るパンのレシピによって、または狙いによって大きく違ってきます。

がしかし、決まりのようなものがある訳ではありませんので、10~20%でお試しいただけたらと思います。

そしてその場合のイースト量についてですが、1~2日発酵の発酵種というのはとても元気で、そして発酵力があります。

ですので、特に変更しなくても構いませんし、仮に食パンに20%入れるとしたら、インスタントイーストは少し(0.1~0.2%くらい)減らしても問題なく膨らんでくると思います。

そのかわり、逆に3日以降の発酵種というのは熟成は進んで香りは強くなっていますが、発酵力としては弱っていますので、イーストは増やす必要はありませんが、減らすのはやめた方が良いでしょう。

 

もし、食パンに発酵種を40%入れると仮定しましょう。

 

しかも作って次の日に入れるとしましょう。

すると、かなりの発酵力を持っていますので、ここは確実にイーストは減らした方が良いでしょう。

かつ、捏ね上げ温度もやや低めに設定しておかないと、グングン膨らんでくると思いますので、もし発酵種を多く入れるのであれば、むしろ発酵の進み過ぎに注意して作業を行わなければなりません。

また、パートフェルメンテというフランスパンの製法があるのですが、これは当日のフランスパン生地を一部取り置き、冷蔵しておいて翌日のフランスパンに配合することで発酵時間を短縮するというものなのですが、これも言い方を変えると発酵種になる訳です。

また、発酵種と言っても細かく言えば、液状のものもあれば、種継ぎをして、なかば天然酵母エキスのようにするものもあり、これが本当の発酵種だというものがある訳ではないのです。

発酵種の使用量に関しては、本来はあくまで ”ダシ”ですから、あまり多く入れると、ダシが効きすぎた味噌汁のように本来の旨味とは違ってきてしまいます。

なので一般的には10%~20%程度で十分だと思います。

配合を変えずに、よりしっとりとさせたいと言う場合で20%。

それ以上だと、今度は少し違う理論が必要になりますし、配合を変更しなけらばならなくなったりします。

なので20%を上限としてお使い下さいませ(*^_^*)

 

次回もう少し掘り下げて説明していきたいと思いますです・・・ハイ