ポリ袋を使ったパン作りとは
こんな質問をいただきました。
おっしゃられている通りパン焼き器で作ったものにはどこか愛情が感じられずにおりましたので大変でも(下手でも)手で捏ねて作っていました。
愛情は別としてもパン焼き器のパンの方が柔らかくて美味しいと子供たちに言われたりしながらも負けずに捏ねておりました所、友人から紹介された本にポリ袋で捏ねる方法がのっておりまさかと思いながらも一度実践してみた所いつも通りの出来栄えとなりびっくりした次第なのです。
手に生地がくっついてしまうことが唯一厄介な手捏ねに対して一切生地に触れずに捏ねが終わってしまうなんて、これで良いものなのかと思うほど簡単で、色々と考える人がいるものだなと感心しますしすごい発想だなと驚いております。
本題の質問なのですが、ビニールに入れてふりふりして残りはもむだけなのにどうして手でバタンバタン捏ねるよりも早く生地ができるのですか??
プロのパン屋さんでも行われている製法の一つなのですか?
だとしたら企業秘密で教えてもらえないのでしょうか??
ご質問を頂く常連の方々から、「よくこんな無礼な質問に回答出来ますよね~」などと言われたりするのですが、この質問の紹介している部分は本題から必要な部分だけを抜粋しているもので、実際にはきちんと挨拶文があり、その後もお礼文がキチンと届いておりますので、けして無礼なのではないということを初めにお伝えしておきますね。
ご心配どうもありがとうございます。
さてご質問のポリ袋で捏ねるという方法ですが、実際にはパン屋さんでは行われてはいないと思いますよ。
なぜなら、やはり量が多くなるととんでもない動きをしなければならからですね(笑)
最大でも数十個程度の量でないとあの製法は出来ないかもしれませんね。
かもしれない・・・・と申し上げたのは、実際には私自身は行ったことがありませんので、ここは曖昧な返答になることをお許し頂きたいと思います。
実際にポリ袋を使ってパン生地を捏ねたことはありませんが、その発想はやはり素晴らしいものだと思いますね。
裏技とか時短ワザとかで、家庭に常備されている簡単な設備や器具を使って様々な製法が紹介されたりしていますが、本当に人間の発想というのはとどまることを知りませんね。
そんな中でも特にこれはすごい技?になるのではないでしょうか。
もし、いつも手で捏ねている時よりも生地がしっとりと完成しているのだとすれば、それはやはりビニールの中の生地の動きに無駄や無理のない証拠かもしれません。
ポリ袋という柔らかい物体と多めの空気の中で、十分に空気を抱き込みながら生地がまとまっていき、更に適度に生地とビニールがひっついたり離れたりすることによって、伸ばすという工程や巻き込むという工程、そしてたたむという工程や叩きつけるという工程などが総合的に行われていることになりますので、誠に理にかなった現象がポリ袋の中で行わていることになります。
肝心な部分を高速で行うことが出来、しかもそこに無理な力が入らないことで、極度の摩擦上昇になるということもなく、比較的速やかに一番生地がべとついてしまう段階を終了することが出来るということを考えると、誠に素晴らしいとしか言いようがありません。
ある意味、とても衛生的であるとも言えるでしょう。
ある程度生地がまとまってしっとりとしてきたら、その後は取り出していつも通りに捏ねるということも可能でしょうから、材料を満遍なく混ぜるという、あの一番手にくっつく工程のみをポリ袋の中で行い、その後はいつも通り手で捏ねていくことで、ご心配の愛情も注入出来るのではないでしょうか。
ただ、一つだけ誤解のないように付け加えておくことがあります。
別の方からの質問にもあったのですが、ポリ袋でフリフリするだけで何故時短になるのか、その後は揉むだけでどうして生地が完成するのかということでしたが、それは、ポリ袋だから早く生地が完成するということなのではないと思うのです。
もちろん、とても高速回転で通常のようなミキサーで生地を捏ねた場合には、過度の摩擦上昇によって生地切れが発生してしまいますので、それを空気中で行うことが出来るこの製法では、その部分の生地切れを起こすことなく高速回転同様の効果を得ることは可能でしょう。
そのことによって生地のまとまりが非常に早くなることは間違いないと言えますが、フリフリとモミモミでまるで機械で捏ねたときのような完成度の捏ねあがりになるということではありません。
パン捏ね器で捏ねた生地が100%であるとするならば、70~80%の捏ね状態であると言えるでしょう。
では、残りの足りていない20~30%分はどうなっているのかと言いますと、別にどうにもなっていないのです。
つまり、そもそも手で捏ねている時点で概ね80%位の完成度だったはずですから、ポリ袋で捏ねた場合でもその程度の完成度を目指すことで十分なはずですし、むしろその方が美味しいパンになるとさえ私は思っています。
パン捏ね器で捏ねた生地というのはほぼ100%しっかりと捏ねられていますので、柔らかさやしっとり感という点では勝るかもしれませんが、美味しさという点においては、しっかりと捏ねられていることがそのまま美味しさに直結するとは言えない場合が多々あるのです。
解りやすく言えば、よく捏ねられているイコールよく膨らんでしまいますから、パンの中の空気が多すぎてしまい味が薄く感じてしまうとも言えますし、噛みごたえとか喉越しのような部分にも違いが出てくるのです。
十分に捏ねられていること、つまり100%捏ねが完成しているからといって、それが即美味しさにつながるわけではないということを先ずは知っておいて頂きたいと思います。
捏ねに関してはこちらの記事も参考にしてみてください。
もう少し補足しておきますと、そもそも家庭でのパン作りでは国内産小麦が多く登場してきますよね。
御存知の通り国内産小麦というのは、外国産小麦のよく知られている小麦粉に比べると力の弱い小麦粉になっています。
その力の弱い国内産小麦を機械で100%いつも通り捏ねてしまうと、それはもう捏ねすぎでかえってボリュームが出なくなってしまうのです。
ですので、今回ご質問の「どうして早く生地ができるのか」の答えは、国産小麦の場合はそもそも外国産小麦の70~80%程度の捏ねで終了することがベストですので、早く生地が出来てしまうのではなく、早めに終了することがベストであるということになるのです。
これは外国産のいつもお使いの小麦粉の場合にも言えることですが、なにがなんでも無理に沢山捏ねることが美味しいパンになるコツなのではなく、特に手捏ねの場合はあまり過度にズリズリしたりバタンバタンしたりするよりも、このポリ袋製法のようにモミモミする程度で終了しておくことで、より風味豊かに仕上がるとも言えるのです。
常々、パン生地の水分量はなるべく多めに作ることが美味しさの秘訣であり、しっとり感を得られたり老化防止効果もあるとお伝えしてきましたが、通常の手捏ねではなかなか水分量を増やすというのは難しいと言えますよね。
しかし今回のようなポリ袋製法ならば、多くの水分量にも対応できるはずですから、ベタベタなくらいの生地でどうか挑戦して見てほしいと思います。