やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

実践ポリパン

 

ポリ袋でパン作りました。

 

ここのところ、非常に小規模のパン屋さんに出向くことが多く、質問もホームベーキングの方からの問い合わせが多かったこともあり、少量のパンを出来るだけ多品種作るには・・・という思案に暮れるなか、そう言えばと思い出したのがポリ袋で作るパン作りなのでした。

この通称ポリパンというパン作りは、主婦の方からの質問では最近特に多かった気がしていたのですが、実際には自分で作ったことがありませんでしたので、「恐らくは・・・」みたいな返答しか出来ずにおりました。

しかしながら、イメージとしてはまったく無駄や無理がないはずだという考えがありましたので、むしろお薦めしてきた経緯があります。

そんな中、孫の運動会を見に行くというビックイベントに参加要請があり (自分の子供の運動会すら見に行けたことがない私にとっては十分すぎるほどのビックイベントなのでした・・・) ならばせめて美味しいお昼を・・・ということで、サンドイッチを作ることを任されたのでした。

そこでふとホームベーキング???というワードが頭をよぎり、ならばパンも手作りしてあげれば家族も皆喜ぶのではないかと考えまして、珍しくもキッチンにてパン作りを行うことになったのです。

そしてそこで初めて目の前にあるビニール袋を見たとき、そうか、ポリ袋でやってみるか!!となり、ならば何もかも家庭用でチャレンジしてみた方が勉強になると考え、スーパーにて材料を揃えて、レッツベーキングということになりました。

結論から申し上げて、ポリ袋でパン生地を捏ねる・・・というのは、実に素晴らしい発想だと改めて思いました。

と言うか、実際には混ぜる・・・かな?

家庭でパンを作られてきた方々にとっては、手作りしたくても初めに粉や水やイーストなどを混ぜる段階ですでに手がベタベタしてきますので、その時点でこれで大丈夫なのか??という気持に襲われていたと思うのです。

気にせずにそのまま捏ねて・・・と言われても、手の甲の方にも生地がくっついていきますし、なかなか速やかに混ざらずにヒヤヒヤとする方も多かったはずです。

どのタイミングまで混ぜて、どのタイミングからどう捏ねに入るのか・・・みたいなところも非常にわかりづらいのが、ボールなどを使った本格的な手捏ねの難点ではありました。

それが、一切手を汚さずにあっという間に生地が満遍なく混ざるのですから、これは本当に感動モノだと思いました。

私がポリ袋での製法に良いイメージを抱いていたのは、パン屋さんでも手袋をして作業する現場が多く、その時に以外にもパン生地と手袋というのは相性が良いのではないかと感じていて、適度にくっついてくる割には、剥がれも良い感覚があったからです。

 

ここに感動

素手で生地にふれるのが当たり前だと思っていた頃とは違って、手袋だと以外にも優しいフィンガータッチになると実感することも多く、尚且つ冷蔵生地などの場合は特にポリ袋を活用しますので、生地の乾燥を防ぎながらも適度にくっつき剥がれる感じが、むしろ相性の良さを物語っているとさえ感じていました。

 

さて、限られた時間の中で色々と試してみたいと思った私は、このようなメニューを作ってみようと試みました。

それが、

 

1、小麦粉300グラムで作ったソフトフランス生地の冷蔵法。

2、小麦粉300グラムで作ったクロワッサン生地の冷蔵法。

3、小麦粉1000グラムで作ったドーナツのストレート法。

4、小麦粉300グラムで作ったロールパンのストレート法。

 

でした。

ちなみに孫の家には温度計と計量器がないので (普段からあまりお菓子などは作らないようなので仕方ないか・・・) その辺は経験に基づく適当で行いました。

あるべきものが無い状況というのも、それはそれで工夫しなければならないことが多く、勉強になりますね。

今回はあえて購入することを辞めて、奇跡的にあった麺棒のような棒と、フライパンと、タッパーと、包丁と、そして今回メインのポリ袋だけは色々な大きさが揃っていましたので、早速前夜に冷蔵生地をフリフリしてみました。

クロワッサンはそもそもあまり捏ねるつもりもなく、細い麺棒で綺麗にバターを折り込みたかったので、高速フリフリを2分程度行って止めました。

まだマダラな部分の残る生地でしたが、高速フリフリは2分でも結構きつかったので、その他の生地も全てフリフリは2分で止めました。

クロワッサン用の生地は30分程度で少しふくらんできましたので、丸めなおしてタッパーに入れ冷蔵庫へ。

生地量の2倍程度のタッパーですので、これ以上イーストを動かしてしまうと蓋がはずれて爆発してしまうと思い、膨らみを確認した時点ですぐに冷蔵しました。

生地の温度は恐らくは28℃近辺であったろうと感じました。

ソフトフランスに関しては、フォカッチャを作ろうと思っていましたので、フライパン焼成の際に膨らみすぎないようにということと、より食感と風味をだしたかったので、炊飯器からご飯を適当にいただいて生地と一緒にフリフリしました。

2分ほどフリフリした後、ビニールごとモミモミしましたが、これではやはり捏ねになっていないような気がしてこれも2分程度で止めました。

まだごはん粒がはっきりと残っているような状態でしたが、とりあえずそのままビニールごと電子レンジの中に入れ、少し部屋が寒かったので湯のみ茶碗にお湯を入れて一緒に置き、蓋を締めてしばらくするとガラス窓が曇ってきましたので、よしよしと思いました。

生地を触った感じでは温度は25℃くらいかな??ということで、50分でタイマーを掛けてお風呂に入りました。

50分後、しっかりと捏ねられていないことと温度がやや低かったことで、あまり膨らんできている感じはありません。

がしかし、むしろその方が作戦成功で、その後しっかりと丸め直しながらパンチ状態を作り、生地の状態をしっかりと把握することが出来ました。

その後30分で先程よりも力強く膨らんできている様子でしたので、更に丸めなおしてタッパーに入れ冷蔵保存しました。

この時点で捏ねは60%くらいの感じでしたが、この後小さなタッパーの中で力が加わることになりますから、翌朝には80%くらいになっているという予測でした。

翌朝、前日に冷蔵した生地はタッパーの蓋をやや持ち上げる程度で程よく膨らんでいましたので、ここまではイメージ通りです。

早速バターを麺棒で叩いて伸ばし、クロワッサンの一回目の折込に入りましたが、捏ねを最小限にとどめているためにスイスイと生地がよく伸び、連続して2回の折り込みを終了しました。

冷凍は先日使用したポリ袋に入れて製氷された氷の上に・・・・(冷凍庫が冷食でいっぱいだったので) 次に冷蔵してあったソフトフランスの生地を二つに分けて丸め直し、フライパンの中で平たく伸ばし温度を戻します。

フライパンに生地が入った状態で20秒ほどコンロの火を付けて消しました。

勿論蓋をしてですよ。

フライパンの蓋が曇ってきましたので、これでOKということで次はストレートのロールパンとドーナツです。

どちらも同じようにフリフリした後、袋の上からモミモミだとは思うのですが、どうしてもこのモミモミは実感がわかないので、やはり取り出して体重をかけながら揉み込みました。

といってもやはり5分はやってない程度で止めました。

手で捏ねる際にいつも感じていることなのですが、相当に柔らかい生地、あるいは油脂の多い生地なら大丈夫なのですが、ある程度の平均的な硬さの生地というのは、手で捏ねている間に生地が締まってきて、これ以上揉むと切れそうだという瞬間があります。

ですので私の場合は、その時点でほぼ捏ねるのを止めてしまい、その後30分おきくらいにパンチで生地を作ります。

30分・30分・30分の合計90分の間にパンチを2回行うことで、ほぼ生地は完成すると考えています。

ですので今回も、フリフリ2分の、ビニールから出して揉むこと4分程度で、後はパンチを2回行い合計90分で分割となりました。

分割 (と言ってもまるっきり適当に切り分けて、大きさを合わせながら丸めました) のあと15分程度休ませた生地で、ドーナツの方はリングやツイストなどに成形し、ロールパンの方はハムやチーズなどを入れて子供の好きそうな焼き込み調理パンにしました。

ドーナツは日清キャノーラ油で揚げましたので、サラッとは挙がりましたが、やはりドーナツ専用オイルよりは油っこい感じになりましたね。

 

ドーナツに関してはこちらの記事も参考にしてみてください。

 

sizuasa.hatenablog.com

 

あんドーナツとかカレードーナツをと思っていたのですが、孫がチョコレートが良いと急に言い出し、板チョコを包んで揚げたり、チーズと海苔とかまぼこを入れて揚げたりと、家庭だと何でもありで楽しいなと思いました。

揚げ物はイメージ通り完成しましたが、やはり最大のネックはオーブンレンジのオーブン機能ですね。

これは常に業務用オーブンで焼いている私にとっては、とても納得の行く焼き加減とは行きませんでしたが、ならばと発酵後の焼き込み調理パンをフライパンに4個ほど並べて蓋をして弱火で焼くこと6分ほど、下火がしっかりと着いてきて、蒸気で全体が蒸し焼き状態になり、手で持てるような状態になったのを確認した後、あらかじめ予熱しておいたオーブントースターに直行させ、上部に焼き色をつけることで香ばしく完成しました。

ちなみに皆さんはとっくにご存知のことと思いますが、フライパンには必ずベーキングシートをしき、そのベーキングシートごとパンに触れることなくトースターに直行することが大切です。

いくら火が通っていると行っても、焼き色が付いていない状態の生地は、持つと指の跡が付いてしまいますからね。

フォカッチャの方はフライパンで温度が戻った頃合いを見計らって丸め直し、平たく伸ばしてまたフライパンに戻しました。

この際はもう動かすこともないので、ベーキングシートは敷きませんでした。

時折コンロの火を付けては消し、フライパンの中をホイロ状態にして最終的な発酵を待ちます。

程よく膨らんできたらトッピングをして、後は中火程度で焼きながら下火がしっかりと付いてきたらひっくり返して両面をしっかり焼きます。

平たい生地のパンにすれば、すべてこの作り方で出来ますから、袋とフライパンだけあればオーブンの心配をすることもなく、しかも香ばしいパンになりますので、これはもう無敵ですね。

クロワッサンも焼き加減以外は完璧に完成しましたが、サンド用でしたので、これはこれで焼き過ぎくらいがサクサクしていて美味しさを演出してくれました。

いつも作るクロワッサンサンドでは、野菜やソース類などでどうしてもベチャッとなってしまいがちでしたが、今回はなかなか火力に悩まされ、結局は20分以上も焼いてしまうことになりましたが、逆にこれが功を奏しました。

イメージの中や工房の中では何回も作ってきたホームベーキングでしたが、実際に一人でキッチンで行うのは初めてでしたので、とても意味のあるパン作りだったと感じています。

ちなみにレシピと呼べるようなものではなく、配合としてはほぼ適当、製パンとしても正に適当なパン作りでしたが、だからこそ生地を見る、生地に触れる、そしてそこから完成品までのプロセスを体感することで、オリジナルの、自分なりのおうちパンが完成するのだなと思いました。

安定とか標準化とか量産とかの時代にあって、家庭で作るパンというのは家庭料理そのものなのではないかと感じました。

アレンジも発想も無限に存在し、ある意味効率や費用対効果を考える必要もない。

そんな貴重なおうちパン作りで、こんなパン食べたことがないという言葉をもらえる感動・・・ 買って食べるのが当たり前の時代だからこそ、大切にしたいですよね。

だったら画像くらい残しておけば良いのにと書いている今では思うのですが、相も変わらず無精なもので、今回も文字だけとなりました。

 

反省を含めてのおさらい

 

最後に少しだけ専門的な事になりますが、今回特に気を使った部分について少しだけ触れておきます。

捏ねれば捏ねるほど膨らみは良くなりますが、やはり味が薄く感じますし、食感が軽くなります。

このあたりを総合すると、お年寄り向けのパンはしっかり捏ねた方が好まれる傾向にあると言えるでしょう。

逆に、極限まで捏ねを行わないパン作りでは、膨らみは悪い分味が濃くなり、歯ごたえのあるパンになります。

小麦粉の美味しさを活かしたい場合や、自家製酵母の風味を引き立たせたいと言うような場合には、けして生地を切ることのない、ズリズリとこすることのないような優しい捏ね方で終了することをお勧めします。

ただし、ドーナツに関してはしっかりと捏ねられていないとどうしても皮が厚くなってしまい、油っこいドーナツになってしまいます。

しっかり捏ねるか、あるいはパンチを何回か行いながら、やや硬めの生地にすることをお勧めします。

また、いかなる段階であれけして生地を乾燥させないことです。

部屋の湿気を保つことも大切ではありますが、最大のポイントはベンチタイムの湿気です。

電子レンジの中やフライパンにフタをするなど、なるべく小さな面積の場所で保存することによって、自らの水分で潤うことが出来ますので、濡らしすぎず、乾かぬように努め、成形後は速やかにやや高温高湿度の場所で最終発酵を行うこと。

家庭でのパン作りでは、捏ねるということや焼くということよりも、むしろそこに良いパンを作るポイントがあるのだということをお伝えしておきます。

今度作るときには必ず画像を用意しますのでお許しを・・・(*^^*)