身体に悪いのなんのと言われながらも、みんな大好きリングドーナツ・・・
このように出来上がったものに、様々なアレンジが楽しめるのがリングドーナツの良いところなのですが、こんなにきれいに作れていますか?
ドーナツと言うのは油で揚げるパンですから、オーブンで焼くパンとは色々と違った難しさがあります。
とは言え、どんな生地を揚げようとも構わないのですが、美しく仕上げようとすると少しばかりコツが必要となってきます。
今回は、特にアンドーナツについてのご質問がありましたので、アンドーナツに特化して解説していこうと思います。
アンドーナツって難しいの?
ドーナツをご家庭でも何度も作っているという方ならお分かりだと思いますが、アンドーナツを美しく完成させるというのは実に難しいことなのです。
何が難しいのかと申しますと、まずはこちらの画像を見て下さい。
中央から左側が普通のアンドーナツで、右側が黒ゴマ入りになります。
一見問題ありのようには見えないかもしれませんが、まずは左側のドーナツの表面をよく見て下さい。
横の部分は色がしっかりと付いているのに、上部は何か白っぽい感じがしますね。
これは、裏側の部分はしっかりと色が付いていることを表しています。
裏側と表側の揚げ色が違うということは、揚げるのに要する時間が違ってしまったことを意味しますし、そうなると白っぽいいわゆる揚げ時間が短かった方の表面はシワシワになってしまいます。
そして、裏側と表側との境目にある横の部分と言うのは、どちらを揚げる際にも油の中に沈んでいるために、裏と表よりもさらに色が濃くなってしまうのです。
こうなると、このドーナツは三種類の色に別れ、白い方には時間の経過と共にしわが出てしまって、なんとも美しいとは言えないドーナツになってしまう訳です。
次にゴマ生地の左上を見てみると、火ぶくれが出来ていて、それが潰れて皮になっているのが解ります。
これは、ドーナツには非常に多い問題点の一つなのですが、揚げている間にプクーっと膨らんできて、その部分がやがてはしぼんできて、このように揚がる訳です。
なぜプクーッと膨らんでくるのかは様々な原因がある訳ですが、少し難しくなりますのでここでの解説はやめておきましょう。
さらに一番の問題点は、表面にうっすらと見える白いポツポツ・・・
そう、これがフッシュアイと言うものになります。
ドーナツは特に目立つのですが、焼くパンでもほぼ同じことが言えます。
焼いている最中に生地の一部がプクーッと膨らんでしまったり、白いポツポツができることがありますよね。
いつもその日に生地を作って、その日に焼いたり揚げたりしてしまうという方には無縁なことかもしれませんが、生地を一旦冷蔵したり冷凍したりした場合、この現象が現れやすくなるのです。
その日のうちにすべてを完成させてしまうことが多い方の場合には、むしろこちらの方が多いかもしれませんね。
これはホワイトラインという横の白い部分が多すぎる例になります。
ホワイトラインは直接油に触れていない部分なので、この部分があまり多すぎると、生っぽいドーナツになってしまうことがあります。
また、こうなるということは発酵過多であることが多い為に、出来上がりもしっとりとはせず、パサついた感じになるでしょう。
こちらの方が解りやすいかもしれませんが、要するに膨らみ過ぎになってしまい、油から完全に浮いてしまうために、色の付く部分が非常に少なくなってしまうのです。
全体的に発酵させ過ぎてしまった場合、あるいは捏ね上げ温度が高すぎた場合、あるいは使用した小麦粉の力が強すぎた場合、あるいは作業中に生地が乾燥してしまった場合などに、このような感じになることが多いでしょう。
「だから何?」と思う人はこれでも大丈夫です(笑)
しかし、なんか美しくないと感じる人には、これでは気になって仕方がありませんよね。
ということで、特に中身に餡を詰めるアンドーナツを通して、美しく仕上げるコツをご紹介していきましょう。
まず大切なのは、成形までの温度管理
ドーナツの生地というのは、焼かずに油で揚げますよね。
それってどういうことなのかと改めて文面にしてみますと、オーブンの中に手をさっと入れても、すぐに熱さを感じることはありませんよね。
じわじわと熱くなってきますが、数秒間は耐えることが出来ると思います。
ところが、油の中に手を突っ込んだらどうでしょう・・・
一秒もしないうちに大やけどですね(笑)
ドーナツの生地というのは、このようにしてとても熱い油の中に直接入れられて、即座に皮一枚が揚がってしまいます。
しかし中心部に行けば行くほど生地が伸びようとしていますから、その伸びようとする力が強すぎると皮を破ってプクーッと膨らんでしまうのです。
したがいまして、油で揚げるドーナツ生地というのは、ややおとなしく膨らんでいく生地でないとうまくいかないということが言えるのです。
それってどういうことかと言いますと、グルテンの強い粉、つまり強力粉だけで作ったような生地の場合には、膨らむ力がとても強くなりますから、あえて弱い粉を使ったり、あるいは薄力粉などをブレンドする必要がある訳です。
また、イーストの量なども控えめにしておくことが大切です。
一つのコツとしては、最終発酵の際に弱い温度でじっくりと大きめに膨らませておくことで、油に入れてから暴れることを抑えることが出来ます。
逆に、菓子パンと同じように高温の発酵室で短時間で大きくしてしまった生地というのは、イーストの活動が活発になり過ぎていて、油に投入した際にも元気いっぱい膨らんでしまうことがあります。
細かいことですが、ドーナツ全般に言えることは、弱い温度と弱い湿度でゆっくりと膨らませることがとても重要となります。
また、特に冷蔵や冷凍した生地を使う場合には、成形する際の生地の温度を必ず20℃以上にして、しっかりと生地のふくらみを確認してから成形するようにします。
ここで冷たい生地、あるいは膨らみの弱い生地状態のまま成形してしまいますと、ふっくらと揚がらないばかりか、火ぶくれができやすくなってしまいます。
火ぶくれしてしまうと中が空洞になりますから、揚げた後に画像のようにしぼんでしまうことがあります。
フィッシュアイも同じくできやすくなりますので、必ず生地の温度を上げてから成形するようにしてください。
成形時のコツは・・・
成形時に注意してほしいのは、餡を中心に入れるということです。
このように片側だけに餡が寄ってしまうと、餡の重みで生地がクルクルと回ってしまって、とても揚げづらくなります。
そして、色が均等につかなくなり、見た目も悪くなります。
食べる分には何の問題もないのですが、パン屋さんなどでこのような包餡を行ってしまうと、揚げ担当の人はそれはそれは大変で、あっちを抑えてもこっちがひっくり返るし・・・みたいになってしまい、てんやわんやになります(笑)
いや、これは笑い事ではなかった・・・(-_-;)
生地に餡を入れる際に、どうしても閉じ口に生地が集まりやすくなりますので、片寄ることは非常に多い現象と言えます。
それを防ぐには、閉じ口を薄くするように意識して行うことや、生地を一度軽く丸めて腰を強くしてから包むようにすると、餡が中央で収まりやすくなります。
また、餡を包んだ後に平たく潰しておくことが重要です。
中央部分を手の平の親指の付け根の膨らみで抑えるように潰しておくことで、餡が横に広がって安定します。
「少し潰しすぎたかな・・・」と思うくらい潰しておいた方が、油の中で安定してきれいに揚げることが出来るでしょう。
これはリトルマーメイドのドーナツですが、さすが機械成形はきれいに包餡されていますね。
ここまで正確にとは言いませんが、油の中できれいに揚げていくためには、生地の厚さも餡の厚さも均一であることがとても重要なのです。
そして、生地はグルテンが強すぎず、温度が低すぎず高すぎず・・・これを守っていただくだけで、きっと美しいドーナツが完成することでしょう。
最後のコツは・・・成形後の発酵の取り方
成形した後、通常は天板に乗せて、あるいはアルミ箔などに入れて発酵させると思いますが、ドーナツの場合はそれではいけません。
ドーナツの場合は、タオルとか布の上にうっすら小麦粉を振って生地を乗せて発酵させるのがオススメです。
それはなぜかと言いますと、先ほども説明した通り油の中に入れる生地というのは均一な状態になっていないときれいに浮いていることが出来ません。
海やプールで浮き輪に乗る時も、片方に片寄って乗ってしまうとうまく浮いていることは出来ませんよね。
成形時にせっかく餡を中央へ包むことが出来たとしても、生地を天板などのくっつく場所へ乗せてしまうと、くっついている面は接着してしまってなかなかうまく膨らんでいくことが出来ません。
つまり、接着してしまっている下部を中心として上へ上へと伸びようとしてしまいますので、どうしても接着していない面だけが大きく膨らんでしまうのです。
そうなりますと、生地の厚みが違ってきたり、生地の膨らみ加減が違ってきますので、餡がどちらかに寄ってしまうのです。
ですから、接着しないようなものの上で発酵をさせることで、上も下も同時に膨らんで均一な状態で油に入れることが可能となるのです。
ということで、そんなのお構いなしで作っている方も多いかもしれませんが、やはり美しさにもこだわりたいと思ったときには、そんなドーナツ特有のコツがあるのだということ知っておくと、美味しくて美しいドーナツを完成させることが出来ると思いますよ。
是非お試しくださいね。