やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

砂糖と塩にこだわる人は意外と多いのが現実

 

健康志向・安全志向なので、砂糖は白い砂糖を使わない。 

塩は天然塩だけ。

そういう方がいますが、砂糖や塩にこだわると、本当に美味しいパンになるのでしょうか?

個人的な意見としては、こだわるのは個人の自由ですので、どうこうコメントするのは差し控えます。

ただし、製パン的にはどうなのかといいますと、砂糖と塩の種類をいくら変えても、パンの味はほとんど変化しません。

仮にしているのだとしても、それは通常味覚として感じるのは困難であると言えます。

砂糖のパンにとっての役割は、甘味をつける・イースト菌の栄養源となる・しっとり感がでる・パンの老化防止に一役買って、量が多いと日持ちするなどがあり、塩はパンに味をつける・パン生地を引き締めて作業性をよくする・雑菌の繁殖を抑えるなどの効果があります。

たとえば、砂糖を黒砂糖やかえで糖(メープルシュガー)などに変えれば、明らかに風味の違うパンになりますが、通常使用する上白糖やグラニュー糖を他の砂糖に変えても、パンにとってはあまり関係ありません。

塩に至っては、通常の食塩や並塩を天然塩と呼ばれている塩に変えても、なんの変化も感じません(なんのと言うと御幣があるかもしれませんが、極めて感じにくいことは確かです)

つまり、どのように健康にいい食品と言われるものでも、製パン的に変化を求めるのはナンセンスであり、もし甘味が上品だとか塩気がまろやかだとか言う人がいるとすれば、それは、ほとんどがそんな気がしているだけです。

他の料理でこれらこだわりの塩や砂糖を使えば、ダイレクトに風味やコクが違っては来るでしょうが、残念ながらそれらをパン作りに用いて、健康志向のパンですと言われても、そんな気がするという程度だと言わざるを得ません。

塩パンの岩塩のようにダイレクトに食べた場合は違いを感じるとは思いますが・・・

塩は製パン的にはどれを使用しても差し支えないのですが、砂糖に関しては少し事情が違います。

皆さんがパンやお菓子を作る時に使用しているのは、恐らく上白糖かグラニュー糖のどちらかでしょうから、 ここで砂糖について少し細かく説明しておきます。

まず、パンにおいてはほとんどの場合上白糖でかまいません。 

というよりは、上白糖が向いています。 

なぜかといいますと、上白糖には転化糖という果糖とブドウ糖の混合物が含まれていて、グラニュー糖には含まれていません。

この転化糖は、ベタベタしていてとても色付きが良いのです。 

パンにとってこの転化糖のベタベタはしっとり感を与え、かつ短時間で綺麗な焼き色をつけてくれるのです。

ですので上白糖は、とてもベトベトと手に付きますし、空気にふれるとすぐに固まってしまいます。

他方グラニュー糖はというと、サラサラとしていてとても扱いやすく、クセの無い甘味をもっています もちろんグラニュー糖でパンを作ると、焼き色が付かないわけではありませんし、しっとりとしたパンにならないわけではありません。

特にたくさんの砂糖を配合しない食パンなどでは、どちらを使っても大差はありません。

ただし、菓子パンのように甘いパンを作る場合は、上白糖でないと色付きが悪くなったり、しっとり感が長持ちしなくなったりするので、出来れば上白糖で作ってほしいと思います。

 


では、例えば焼き菓子ではどうでしょう?

 

ここではパウンドケーキやクッキーを例にとってお話しますが、これらはパンに比べて砂糖の量がとても多いのに気が付きませんか?

パンが小麦粉1キログラムあたりの砂糖の量が、食パンで50グラム位であるのに対して、パウンドケーキは、小麦粉1キログラムあたりの砂糖の量が、小麦粉と同量の1キログラムも入りますよね。

これだけ全体的に砂糖の量が多いと、転化糖が入った上白糖では色が付きすぎて焦げてしまう危険があるのです。

ですから、焼き菓子などには一般的にはグラニュー糖を用いた方が失敗なくいくと考えられます。

最後に余分な一言・・・・・ 砂糖は原料糖を遠心分離機で濃縮・分離を繰り返し、一番に取れる砂糖つまり一番搾りがグラニュー糖、二番搾りが上白糖で、五番搾りが三温糖です。 五番搾りまでくると、熱によって着色されてしまうので、上白糖よりも三温糖は焦げてしまった砂糖でしかありません。 よく、白い砂糖は体に良くないという人がいますが、焦げた砂糖のほうが体に良いとは、まさに迷信です。 更に、上白糖は白く漂白でもされているように言う人がいますが、これも迷信で、砂糖は実は無色透明なのです。 ただ、結晶が細かいので肉眼では白く見えるだけです。 雪もそうですね。

白いってそれだけで幻想的な気持ちになれるような気がするのですが、白い砂糖よりも色の付いた砂糖が多く使われるのはなぜなのでしょうかね。