やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

レーズンブレッドがつぶれてしまうのはなぜ??

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1.5斤型で焼くレーズンブレッド

 

こんな質問を多くいただきます。

 

生地のままで焼くととてもふんわりと膨らんだパンになるのですが、その生地にレーズンを入れてしまうと、良く膨らみませんし、次の日にはパサパサとしています・・・

 

焼いてすぐは良いのですが、ちょっと時間がたつと横が潰れたように折れてしまいます・・・

 

レーズンは大好きなのですが、どうしても詰まった感じの重いパンになる???気がするのですが、それはレーズンの入れすぎですか?減らせば膨らみはよくなりますか・・・

 

 

レーズンを使ったパン、いわゆるぶどうパンは皆さまも良く作るのではないでしょうか。

美味しく出来ていますか??・・・それとも上記の質問のように、潰れてしまったり、何か硬かったりしてしまいますか?

 

ホームベーキングでも、そしてパン屋さんでも不動の人気を誇るレーズンブレッド、レーズン食パン、ぶどうパン、レーズンパンなどなど、様々な呼び名がありますが、干しブドウを使ったパンと言うのは本当に人気がありますよね。

乾燥果実の王様と言っても良いでしょうね。

しかし、確かに他のパンに比べるとすぐに硬くなってしまったり、そもそもあまりふっくらとはしないパンになることがあると思うのです。

 

そんなレーズンを使ったパンについて、色々と説明していきたいと思います。

 

レーズン食パンにすると横が潰れやすいのはどうして?

 

ぶどうパンを食パンの型で焼く場合、当然ながら普通のパンよりも高さがあります。

それはレーズンが入らなくても同じことではありますが、レーズンが入ることでパン生地にかかる負荷が非常に大きくなります。

これが例えばゴマなどの小さな物体でしたらそうでもないのですが、混ぜ物の中でもレーズンと言うのは比較的重いのです。

しかもある意味水っぽい・・・

その水っぽくて重いレーズンが、パン生地の中に満遍なく含まれていますので、風船一つ一つにかかる負荷が増え、さらにはパンの骨格を作っている外皮にはもっと負荷がかかるのです。

なぜかと言いますと、例えば通常の食パンの場合でしたら、一斤の型の中に約440gのパン生地が入る訳ですが、その440gというのはすべてがパン生地です。

当たり前ですね(笑)

しかし、レーズン食パンとなると同じ440gだとは言っても、そのすべてがパン生地なのではなく、レーズンが約23~25%含まれていることになります。

つまり、パンの骨格を作る外皮に対して、全重量の4分の1のレーズンがおんぶされていることになるのです。

ということは、ただでさえもいわゆるパンの耳の部分だけで全体重を支えなければならないのに対して、支えるべき生地は75%しかなく、さらには25%ものレーズンの重さを支えなければならない訳です。

ですから、レーズンの量にもよりますが、レーズンを入れた高さのあるパンを作る場合には、ある程度しっかりと焼きこんで、耳の部分に厚みを持たせなければ支えきれないということなのです。

 

いつもの食パンより、焼く際に少しコツがいることになりますね。

ただし、だからと言って耳が厚いのは嫌だとか、あまり焼きこまない方が好みだというような場合は、画像のように平たく焼く、あるいは小型の型を使って焼く方がおススメです。

 

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NIPPNおいしいレシピ、レーズンパン

 

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小さな型で焼いたぶどうパン

こちらのIFトレーは、薄いプラスチックで軽く、何度も使えてお得です。

パウンドケーキなどにもお勧めですよ。
 

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レーズンを入れたパンがすぐに硬くなるのはなぜ??

 

レーズンを入れたパンほど、ホームベーキングとパン屋さん、そして大手のパンとの違いがでるものはないでしょう。

それは、日持ちというものにどれだけ取り組んできたかが表れてしまうからなのです。

レーズンを入れたパンが次の日には硬くなってしまうのは、レーズンがパンの水分を奪ってしまうからなのです。

なぜ奪ってしまうのかと言いますと、それはレーズンが干したぶどうだからですね。

一見果肉に結構な水分がありそうなのですが、そうは言ってもパンの水分にはかないません。

時間の経過と共に、どんどんレーズンがパンの水分を奪ってしまい、レーズンはその分柔らかくなるのですが、肝心のパンはパサパサしてしまうのです。

ではそれを防ぐにはどうしたら良いでしょう・・・ということで、皆様も知ってか知らずかラム酒などにレーズンを漬けて使われている方も多いと思うのですが、要するにレーズンに水分を与えておいて、パンの水分を奪うどころか、逆にレーズンの水分をパンの中で放出するようにしようと考えたわけです。

レーズンをお湯でさっと洗うだけでも、レーズンの中に水分が入り込みますし、表面の汚れも取ってくれるので一石二鳥なわけです。

しかし、どうせなら風味も付けたいと言うことでラム酒やワインなどに少し漬けますと、アルコールは雑菌の繁殖も抑えてくれますし、パンの保湿作用もありますから、水を含ませるだけよりもパンがしっとりとして、美味しさが長持ちしてくれるのです。

ただし、あまり多くのお酒にビショビショになるまで漬け込んでおくと、今度は果肉が柔らかくなりすぎますし、パンが水っぽくなってしまいますので、振りかけて一晩おく程度で良いと思います。

 

コツ

よりしっとりとさせたい場合は、たくさんのラム酒の中に何日か漬け込んでおいて、使用する際にしっかりと絞って余分なラム酒を落とすと良いでしょう。

また、お酒類をオレンジキュラソーとかキルシュワッサーなどの果実酒にしたり、ハーブを適量一緒につけておくことで、自分だけのオリジナルな香りのレーズンパンになりますよ。

 

 

レーズンはどれくらい入れるのがいいの??

 

 レーズンを入れる量というのは、レシピによってかなり違いますよね。

 もちろんお好みで構わない訳ですが、入れれば入れるほど難しくなることは想像に難くないと思います。

ではどの位が妥当なのかを見ていきましょう。

 

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アンデルセンネット

 おしゃれなレーズンブレッドですが、こんなに大きなパンはご家庭では難しいかとは思いますが、これで小麦粉1kgに対して500~600gのレーズンが使われていると思います。

 

これを製パン用語で言いますと、対紛50%~60% と呼びます。

ベーカーズパーセントは皆さん聞いたことがあると思いますが、製パン用語ではこのようにすべての材料を「対紛 たいふん」粉に対してどれくらい入れるかで判断するのです。

 

 焼き立てパン屋さんに一番多いレーズン量だと思います。

十分にレーズンを感じることが出来ますし、端から端までレーズンたっぷりと言った感じでしょうか。

しかし、この量を家庭で入れるとなるとやや難しくなります。

 

せめて、山形に焼くのはやめて、四角い型で焼いて高さを出さないようにしたほうが良いかもしれません。

 

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パティスリーSATSUKIレーズン食パン

 

また、ご家庭では練り込むのも意外と難しいですよね。

生地を薄く延ばしてレーズンを巻き込んでいくと言う人もいることでしょう。

 

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レタスクラブのぶどうパン

 

ただしこうなると、どうしてもレーズンの周りに空洞ができやすくなりますし、満遍なくレーズンが入っているということではなく、レーズンの多い部分と少ない部分が出来てしまうという欠点もありますね。

 

また、これでどうだーっ!!というくらい多く入れる人もいます。

 

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豊中の「YOSHIHIRO IKEDA」レーズンブレッド

 

同じ巻き込むタイプでも、ここまで入れると端までギッシリ入りますね。

ただ、このようにパン屋さんがやっても空洞は出来てしまいますので、ご家庭でこれだけの量を入れると間違いなく洞穴になってしまうでしょう(涙)

 

レーズンの量というのは、たいていの場合対紛で30%~100%入れることが多いのですが、パンとしてのしっとり感とかフワフワ感を重視したいのであれば、対紛30%~40%まで、難しいかもしれないけどしっかりとレーズンを感じたいのであれば50%~60%、上記画像のように、これでもかを味わいたい場合は80%にチャレンジしてみましょう。

ただし、たくさん入れる場合は製パン性から言っても、平たく焼く方が美味しくもなりますし、レーズンの旨味が生地全体に行きわたりやすくなりますので、無理して食パンにするのではなく、小型で焼いていただくのが良いと思います。

 

また、しっとりとしたレーズンパンはもちろん美味しいですが、ハード系のフランスパンとか、全粒粉のパンなどにもレーズンは非常に合いますので、個人的にはそちらの方がおススメです。

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タカキベーカリー石窯シリーズ

 

ライ麦パンにもレーズンはよく合いますね。

ってことは、なんにでもレーズンは合う訳ですね・・・ハハハハ

 

注意点

捏ねの最後にレーズンを混ぜたパンというのは、やはり多少べた付きますし、取り扱いも難しくなります。そこで生地にダメージを与えてしまうと、オーブンで膨らまないパンになってしまうのです。ですので、ダメージの軽減だけを考えるのであればレーズンは成形の際に巻き込む方が生地に対しては優しいと言うことになります。生地に混ぜ込む際にレーズンが潰れて、果肉が出まくると発酵に影響が出てしまいます。また、お酒をたくさん含んだパン生地は発酵が阻害されて膨らみが遅くなりますので、レーズンの量が多い場合、そしてお酒の量が多い場合には、イースト菌を増やしたり、発酵時間を長めに取ることが大切です。

 

ということで、色々なレーズンパンを見てきましたが、いかなる混ぜ物であっても、混ぜる前にしっかりと生地を強くしておくことはとても大切です。

しっかり捏ねるということだけではなく、発酵途中でパンチを入れるなどして、生地に細かいガスをたくさん蓄えておくこと、グルテンを最大限引き締めておくことが大切です。

また、当然のことながら、グルテンの強い小麦粉を選んでおくことが失敗しないコツになります。

柔らかくてしっとりとしたレーズンパンを作りたいのであれば、とっても力が強くて、そして味が良いのは「春よ恋」だと思います。

パン屋さんでもかなり使われています。

 

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 また、フランスパン生地にレーズンというのも本当におススメです。

フランスパンに入れる場合は、レーズンは対紛30%位の少なめがおススメですよ。

 フランスパンらしさを残しつつ、ほんのりレーズンみたいな感じです。

そしてフランスパンと言えば、やはり定番なのはリスドォルでしょう。

 

【お一人様2点まで】準強力粉 リスドオル 2.5kg 日清製粉 フランスパン用小麦粉 リスドォル リスドール_ 

 

色々なレーズンパンをじゃんじゃん作りましょうー!!

 

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