美味しそうなパンですね。
パン生地そのものはとても発酵状態の良いパンであることが解ります。
特に見た目を気にしなければ、完璧なパンであるとも言えるでしょう。
しかし皆様はどうしても見た目が気になるようですね。
あまり専門的な・・・というか、キレイな画像ばかり紹介しているサイトの見過ぎなのではないでしょうか。
写真写りなんて、ほぼほぼ加工してますよ実際は・・・
ただし、本当にきれいな成形というのはもちろんありますし、皆様もそこを目指しているのだと言うことはよくわかります。
ということで、これでは納得がいかないという方に向けて、あえて指摘してまいりましょう。
チーズを入れているので猶更難しくなっているとは思うのですが、生地がしっかりと張れていません。
フランスパンと言うのは、表面の生地がしっかり張れていることで、その腰の入った表面にナイフを入れると自然に広がろうとするのです。
しかし表面が張っていないと、生地が緩んでいますので(たるんでいると言った方が解りやすいかもしれませんね)ナイフを入れるとそのショックでむしろさらにしぼんでしまうのです。
つまり、開くどころかしっかり閉じてしまう、シワになってしまうとも言えるのです。
このパンの良いところは、生地状態は良い、スチームは十分に入っている、焼成温度は適正であるという点です。
しかし、成形がゆるゆるで表皮も脹れていない、しかも中のチーズがゴロゴロと邪魔をしてきれいに均等に伸ばすことも出来ていないので、このようによれよれなのです。
また、このパンはクープナイフではなくハサミで切込みを入れていることが見てわかりますが、結局表面に張りがない為に開けずにいる訳です。
カッコいい見た目のパンにしたければ、生地に慣れて成形のコツを身に着けるしかありません。
しかしそればかりは人によって出来不出来はバラバラですから、数をこなしたからと言って出来るようになるかどうかは解らないのです。
そんなことを考えているよりも、このパンで言うならもう少し短く小さなパンにすれば、成形もおこないやすくなりますし、少なくとも隣同士がくっついてしまうような並べ方をしないようにするだけで、意外にも鮮やかなパンになるような気がします。
とは言えカットしてしまえば、こんなにも美味しそうに出来ているではないですか。
あまりクープがどうのとか考えずに、大きさを揃える、4本程度を均等に並べて焼く、張りのある成形を心がけるという基本を大切に、味重視で作っていただきたいと思います。
次はこれです
食パン関係の質問は多くいただくのですが、この展開は初めてです。
しかし、これは家庭ばかりではなくパン屋さんでも極めて重要な事例ですので、ご紹介しておきたいと思います。
知ってか知らずか、なかなかこのようにはならないでいるとは思いますが皆様はいかがでしょうか?
見事に横がへこんでしまっていますね。
これは焼きがあまいのでしょうか?
上部もかなりシワシワですから、何か生地に問題があるのではないかと思うのも無理はないのですが、実はこれはまったくそうではないのです。
焼き上がったと思ってオーブンからいったん出しましたが、まだ焼きがあまいと判断してもうしばらく焼く・・・するとこんなパンになってしまうのです。
特に蓋のある角食パンの場合にこのようになります。
なることがある・・・ではなくなりますと断言できるのは、やはり私もパン屋になりたての頃にこうなった経験があるからなのです。
通常の作業の中では、なかなか焼いている途中でオーブンから出すとか、いったん蓋を取るということはないはずですが、例えばタイマーをかけ忘れてしまったとか、温度を間違えてしまったなどの場合、どのくらい焼けているかを確認するためにいったん出すことがあるのです。
しかし、いったん蓋を開けたものを今一度蓋をしてオーブンに戻す、あるいはいったん型から出したものを型に戻すと言うようなことをした場合、間違いなくこのように潰れてしまうのです。
ですので、もしタイマーのかけ忘れや焼き加減を確認したい場合は、オーブンをさっと開けて蓋をほんの少しだけずらして色を確認し、すぐに戻せば助かる確率は増します。
しかし、じっくりと確認したり、オーブンから出してそのまま蓋を取らずに数分置いたりすると、このように見事にへこんでしまいますので、あまり実際には起こらない現象ではありますが、知っておいて損はない現象なのです。
オーブンの中の蓋をした食パンがちょうどよく焼けているのか、焼きすぎなのか、それともまだまだなのかを見極める技があります。速やかにオーブンを開けて型を片方の手でしっかり押さえ、もう片方の手で蓋を少しだけずらそうとした際に、蓋がなかなか開かないようならまだ焼きがあまいのです。蓋が軽く開いてしうようなら焼きすぎかもしれません。ほんの少し開きずらそうながらも、結局はすっと開くというのが丁度よい状態なのです。また、蓋を開けた瞬間にホワイトラインに少しでもしわがあれば焼きすぎです。蓋よりパンが盛り上がってくるようなら焼きがあまいです。
では次です
私も大好きなクルミパンですが、翌日にはパサパサになってしまうのはなぜか?と言うご質問になります。
これは見てすぐにわかるように、焼き過ぎです。
とは言え焦げている様子はありませんので、温度が低くて時間が長い最悪のパターンとなります。
これはこれで焼いてすぐに食べればかなり香ばしくてお美味しいはずですが、やはりパン内部の水分がすっかり飛んでしまいますので、できる限り高温で短時間で焼き上げると言うことだけ守っていただければ、すぐに解決するはずです。
パン生地そのものは見事に美味しそうに膨らんでいますのでもったいないですね。
ただしです、私が当時修行した大阪や神戸の有名店、あるいは高名な先生はもっと焼くように言っておられました。
その方が香ばしく消化にも良いからだとのことでしたが、恐らく今現在ではその考え方は通用しないかもしれませんね。
では次です
ゴマが入ったハースブレッドですが、見事ですね。
クープも鮮やかで専門店以上ではないでしょうか・・・
このパンの何が気に入らないのか理解に苦しむところですが、奥のパンを見るとわかるように、へこんだ部分があったり、クープが波打っていたりするのがお気に召さないようです。
しかし、現実問題として手前のパンはうまく出来ている訳ですから、数をこなして理想に近ずく以外にはないと思いますが・・・
奥のパンのように波打ってしまうのは、生地の中の比較的表面近くに大きな気泡ができてしまっていて、それがクープをした後割れて沈んでしまうとこうなるのです。
解決方法としては、成形時にしっかり、しかも均等にガスを抜いて成形することです。
と言っても、言葉ではもうすでにお分かりのことと思いますので、より締めながら巻き込むということをイメージしながら行っていただければ完璧でしょう。
ご家庭のオーブンでしたら、もう少し細くするか小さくするかしたほうがより奇麗に焼けるとは思います。
では次です
レーズンだけではなく、いくつかのフルーツを巻き込んだパンのようですが、いわゆる1山のワンローフタイプですね。
生地を2つ3つ入れるタイプとは違って、1山の場合は均一な成形が求められます。
ガス抜きなどもきちんと均等に行えていないと、一部に気泡ができてしまい、このようにその部分だけが膨らんできてしまいます。
一枚の生地を麺棒で伸ばし、その上にフルーツなどをのせて巻き込んでいくタイプのパンでは生地の厚みの均等性や、巻き込む力加減が非常に難しく、どうしてもこのように同じ高さにならなかったり、スライスすると空洞が目立ったりしてしまいがちです。
しかしながら、その分生地にストレスがかかっていない為、フワフワとしたソフトなパンになります。
見た目にもソフト感が伝わってくるようですよね。
無理やりフルーツを練り込むよりも、この方がしっとり感も長持ちすると思いますし、難しい分美味しさも長持ちするパンになるでしょう。
ワンローフで何かを巻き込んでいくタイプの成形のコツは、成形前のベンチタイムを十分長めに取り、ガスをしっかり含ませた生地を、きつめに巻きあげていくことです。成形の際に麺棒でしっかりガスを抜くのではなく、ある程度気泡は残しておいて、強めに巻き込んでいくことで、巻き数も多くなり、フルーツに負けない張りを得ることが出来るのです。
ということで、今回ももしかして自慢では??と言いたくなるような美味しそうなパンばかりでしたが、美味しさは時に見た目に逆らうことも大切だと言うことだけは知っておいてほしいものです。