やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

ありのままを受け入れることも大切です

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プチフランス

 

フランスパンの生地で具材を包み、このようにして切り込みを入れて焼くパンというのは、多くの人が作っているであろう人気のパンの一つでしょう。

しかし、画像のようにうまく開いてくれずになんとなく小さくまとまってしまってしまう・・・

 

 

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本当はこんな感じでダイナミックに開いてほしかったのに、なんか情けない感じに仕上がってしまって悔しい・・・

と言うようなお悩みを多く聞きます。

今回は、このようなお悩みを持つ方に、「それはある程度仕方のないことなので、あきらめるしかないと思いますよ」ということをお伝えしたいのと共に、どうしても納得できない・・・と言う方に多少は役に立つかもしれないコツをお伝えしていきたいと思います。

 

設備の違いだけはどうしようもないことを知りましょう

 

残念ながら、家庭で使われているオーブンと業務用のパン屋さんが使っているオーブンとでは性能が全く違います。

上記画像の生地でも、業務用オーブンで焼けば下の画像のようになるのです。

「え~こんなにも違うのに出来ちゃうの~」と思われるかもしれませんが、できちゃうんですこれが・・・。

その分値段も10倍くらい高いわけですから、そのくらいできてくれないと困るとも言えるのですが・・・しかしながらその性能というのはとにかくすごくて、一度温度が上がったらそう簡単には下がりませんし、重厚な壁と扉に囲われていますので熱が逃げることもなく、それでいて熱の伝わり方がかなり工夫されていますので、外側だけではなく中心部にもしっかり熱が伝わるように設計されているのです。

一番すごいと感じるところは、パンが持つ水分によって庫内がうるおい、結果として皮の部分は薄くパリパリとしていて、中の水分は飛び過ぎずにしっとりと焼けると言うところなのです。

残念ながら、家庭用のオーブンでこれを成し遂げることはまず不可能で、その点だけは認めたうえでパン作りを楽しむしかないのです。

ただしコツはあります。

上記画像のフランスパンは恐らくソフトフランスの生地で、油脂や砂糖も若干含まれていると思われます。

成形のコツ

よりパリッとしてダイナミックに割れたパンにしたい場合は、油脂や砂糖は配合しない方が良いでしょう。生地は硬めにした方がパリッとしたダイナミックな割れ目ができやすいでしょう。表面に張りを持たせることが大切なので、成形時中に何かを包んだ後には、丸めたり形を整えようとして生地に触りたくなるところですが、何かを包んで下で閉じた時点で表面が張っていますので、絶対に閉じた後に生地に触らないことが重要です。そして切込みは、大きめのハサミで深めに一気に入れましょう。

 

焼成のコツ

オーブンの温度は220℃以上の高めに設定し、天板もオーブンの中で一緒に焼いておきます。ハサミを入れた生地の上に、手の平くらいの大きさにカットしたアルミホイルをのせた状態でアツアツの天板の上にのせて、蒸気を発生させます。5分ほどで一旦アルミホイルを取り去ります。あとはしっかりと色が付くまで焼きましょう。蒸気の量はやや少なめが良く、コツをつかむまでは1~2個で焼くようにしましょう。

 

 上火がききすぎることを抑えながら、下火であおっていくことで若干きれいに割れる手助けになります・・・が、どのオーブンでもできると言う訳ではないかもしれませんし、成形や生地の発酵状態でも違いがありますので、あくまで参考程度にお考え下さいね。

 

では次です。

 

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フィセル

 

これはまたきれいに香ばしそうに焼けたフランスパンですが、「どうしてこんなに避けるように割れるのか?」と言うご質問です。

これは単純にスチーム、つまり蒸気が足りていないだけですね。

蒸気が多いと艶が出ますが、多すぎるとクープが全く開きません。

相反してこのようにスチームが少ないと、どこまでもクープが開きまくってしまいこのようになるのです。

生地は非常に元気で成形も上手であるからこそ、このようにダイナミックに割れている訳ですから、スチームの量だけを増やしてあげればOKだと言えるでしょう。

 

では次です。

 

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塩パンが「なんかデブっぽくないですか?」「もう少し層がくっきり出てほしいのですが」と言うお悩みですが、十分美味しそうですけどね~

デブになるのは、もう少し成形の時に横に広く延ばしてから中央にバターを乗せて巻いていけばスリムになりますし、少し引っ張るようにしながら巻いていくと層がくっきりと出ると思いますよ。

その他蒸気の加減や生地の状態などは完璧と言っても良いのではないでしょうか。

ここまできれいだと恐らくはオーブンの中で1個だけで焼いたと思うのですが、このように満遍なく焼き色を付けたいと思ったら、家庭用のオーブンでは少量で焼くしかありません。

4~6個を同時に焼こうとすると、どうしても熱風が遮られてしまって、均一には焼くことが出来なくなるでしょうが、焼けていない訳ではありませんので、人さまに自慢したい時だけ1個で焼くようにしてはどうでしょうか(笑)

 

では次です。

 

 

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塩パン

これは見る人が見ればすぐにわかることですが、フィッシュアイが出てしまっているということですね。

通常の作業、つまり当日にすべての作業を行う製法の場合は、真冬に生地をほったらかしにしておくことがない限り、このようなポツポツは出ることはありません。

この画像の生地は、いったん冷蔵したか冷凍したかした生地であり、その際に生地が何らかのダメージを受けてしまったと考えられます。

このポツポツが出来てしまうプロセスはとても難しく、「だからこうなる」と示すことはできません。

また、同じ生地であったとしても、今日は出たのに明日は出なかったと言うこともあり得ます。

若干皮が厚くなったり、風味が損なわれることもないわけではありませんが、お店に行っても正直よく見かける現象ですので、冷蔵や冷凍で生地を管理した場合に起きやすい現象であるということだけ理解しておけばよく、まずいパンになってしまうと言う訳ではありません。

また、解決策も多くあるのですが、ややこしいのでここで紹介することは差し控えます。

 

では次です。

 

 

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ソーセージクロワッサン

 

「クロワッサンにソーセージを入れると、こうなるのは仕方がないのでしょうか」とのご質問なのですが、おっしゃる通りですね。

何となくはご理解いただけていると思いますが、脂を含む食肉などを包んだ場合、温度が上がって焼けてくると、当然ながら脂分が外へ流れ出てしまうために、このように空洞ができてしまうわけですね。

本来ならば、パン生地と包んだ具材というのは接着してしまいますので、そこに空洞ができるということはないのですが、くっついていよいよ火が通りますよと言う時に、ソーセージの方から脂が出てきますので、くっつくことが出来ない訳ですね。

しかも、ソーセージの重さがありますので、ソーセージが太かったり重かったりすればするほど穴は大きくなってしまいます。

また、脂の多さにも関係してくるでしょう。

これを防ぐには、ある程度ソーセージだけを先に焼いて脂分を拭きとっておいてから成形すると防ぐことが可能ですが、そもそも脂分も旨味ですから、できれば一緒に食べたいものですよね。

ということで、あきらめて下さいと言うことになるでしょうか。

 

では次です。

 

 

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あんぱん

 

美味しそうなあんぱんですが、これもフッシュアイと焼き色のムラがお悩みとのこと・・・

フィッシュアイに関しては、上記で説明した通り無視するしかない、または冷蔵法などを中止することで防止することは出来ます。

しかし、冷蔵低温発酵などの製法上の旨味も失うことになりますから、どちらを優先するかを考えた場合、私なら冷蔵法はやめません。

この画像を見る限りでは、とても美味しそうであり生地の発酵状況も完璧です。

後ほんの少しだけ工夫をすれば、フィッシュアイはなくなるかもしれませんが、焼き色のムラだけは仕方のないことだとあきらめましょう。

私ならお金を出しても食べさせていただきたい仕上がりだと思いますので、どうぞこのままの作り方を継続してほしいと思います。

 

フィッシュアイというのは、科学的にこうすれば・・・というものはほぼありません。

どうしたとしても、起こる時には起きてしまいます。

ただ、それは表面の見た目の問題であって、そのポツポツが品質に及ぼす影響というのはほとんどありません。

 

ポツポツもカサカサもツヤツヤもムラも、パンそのものの美味しさを否定するようなものではありませんので、そのままでも良いと考えられてはいかがでしょうか。