過去にこんな質問をいただきました。
Q,子供がメロンパンが大好きなもので、何度も挑戦しているのですが、どうしても毎回変な形になってしまって困っております。
一番解らないのは、メロンパンは発酵室に入れると表面がビショビショに濡れてしまって、果たしてこれで良いのかと言う事と、室温に出しておくといつまでも大きくならずにいることです。
いったいどちらで発酵させるのが本当なのでしょうか?
発酵室に入れると、焼き上がりがペタンとしてしまいますし、常温で発酵させたものは帽子をかぶったパンのようになってしまいます。
成形や生地の状態にも原因があるのでしょうか?
その他にも、何かコツのようなものがあるとしたら、教えていただけないでしょうか?
家庭でメロンパン作りと言うのは、実は非常に向いています。
お子さんは皆メロンパンが大好きですしね(*^_^*)
ただ、メロンパンと言うのは他の菓子パンに比べて、すこしだけ理屈が違いますので、その要点だけつかめればきっと美味しいメロンパンが焼けるはずです。
と言う事で、今回はメロンパン作りのコツについて解説して行きたいと思います。
まずは肝心のメロン生地であるクッキー生地作りですが、これは味重視でいけばやはりバターを使いたいところですが、家庭ではあえてマーガリンをお勧めいたします。
何故かと言うと、バターが良く伸びる温度帯は、マーガリンに比べて非常に狭い為に、せっかく美味しくても見た目に美味しそうに作るのが非常に難しくなるからです。
しかも、失敗も多くなるでしょう。
ですから比較的高級な無塩マーガリンをお勧めいたします。
マーガリンとバターを半々にしても良いでしょう。
メロン生地作りと言うのは、パウンドケーキなどの焼き菓子を作る時と理屈は同じです。
ただし、違う所は成形段階でしっかりと揉みこんで、ある程度グルテンを出す事なのです。
本来薄力粉を使った菓子は、あまり捏ねる事をせずにサックリと仕上げようとしますが、メロンパンの上生地があまりサックリしていると、パンがゆっくりと発酵して大きくなっていく時に、メロン生地が付いていけずに割れてしまい、ひび割れのようになってしまうからです。
そこでメロン生地をある程度揉んで粘りを出しておく事で、生地と一緒にゆっくり伸びて行ってくれるのです。
一旦作って冷蔵庫で冷やしながら休ませ、良く冷えたメロン生地を、素早く揉みこんで滑らかにしておく事が、メロンパン作りの最初のコツとなります。
ただし、いつまでも揉んでいるとベタべタと溶けてきますので、適度に手粉を使いながら、素早く手際良く揉み込む必要があります。
手の温度が生地に伝わらないように、グっと押してパット離す!・・・・畳んではまたグッと押してぱっと話す・・・と言う感じで(^0_0^)
そして滑らかになった状態で一度麺棒のような棒状に伸ばし、ラップをして冷蔵庫へ保管しておきます。
当日はもちろんですが、翌日でもそのまま使えるでしょう。
パン生地を作る前までにこの作業を完成させておき、パン生地の発酵中に分割カットして丸めておきましょう。
この時、けしてカットしたままではいけません。
必ずきれいに丸くして、乾燥しないようにタッパーに入れたりラップにくるんだりして冷蔵しておきましょう。
次にパン生地ですが、これは何生地でも基本的に構いません。
と言いましても、メロン生地には砂糖が沢山配合されていますので、色付きが早いと言えますね。
と言う事は、生地も出来るだけ早く焼ける砂糖の配合量の多い生地の方が失敗がありません。
例えると、フランスパンのように砂糖が入らない生地でメロンパンを作ろうとすると、メロン生地は焼けているのにパン生地は生・・・・・な~んてことにもなりかねませんよね。
ですから、適度な甘さを持つ生地でお試しいただくのが最善でしょう。
ちなみにパン生地とメロン生地の割合は1対1が標準です。
つまり同量の生地で作るのがベストと言う訳です。
よく見かけるレシピでは、メロン生地の方がパン生地よりも少ないことが多いと思います。
ダメな訳ではありませんが、メロン生地は多い方が当然美味しいですし、メロン生地が少ないとどうしても薄くなってしまう部分が出来て、意外とうまくいきません。
例えばこんな感じです。
端っこまで生地が行きわたらずに、薄い部分はこんな風に色が付きすぎて硬くなります。
また、
このように生地の伸びにメロン生地がついていけずに、ベレー帽のようになってしまうことがあります。
もちろん成形が上手であればこんなことにはならないかもしれませんが、メロン生地が少ないと、このようなリスクがつきまといますので、味の面を考えても、やはりパン生地と同量はほしいところですね。
さて、いよいよご質問にあるように成形後に発酵させていく訳ですが、いったいメロンパンはどのように発酵をとるのがベストなのでしょうか?
ご質問のように発酵室に入れるとベタベタになってしまうと言うのは、メロンパンにとってはその温度と湿度では高過ぎると言う証拠ですね。
ですので下げなければなりません。
適温で言えば30~32℃くらいまででしょうか?
逆にあまり低いと、いつまでたっても発酵してこないということになるでしょう。
メロンパンの発酵を考える時に他のパンと違う所は、パン生地の表面がクッキー生地であると言う事ですね。
クッキー生地は当然油脂のかたまりですから、温度に敏感です。
パン生地には良いとされる温度や湿度も、バターやマーガリンにとっては高過ぎるのです。
そして知っておかなければならないのは、クッキー生地は発酵しないと言う事。
あたりまえじゃ~ん(ー_ー)!! と言いたいところでしょうが、ここが肝心なのです。
パン生地は膨らむのに、クッキー生地は膨らまない。
と言う事は、クッキー生地が冷えていて固まっていたら、パン生地が膨らもうとしてもクッキー生地に抑えつけられている為に膨らめない。
なので、パン生地が適度に膨らめるようにクッキー生地を少し柔らかくしなければならない。
そんな温度帯がメロンパンには望ましいのです。
それは、クッキー生地が適度に柔らかくなり、けっして溶ける事は無い温度帯、つまり30℃近辺なのです。
そしてこの時に、温度以上に気を付けなければならないのは湿度なのです。
湿度はパン生地にとっては命なのですが、クッキー生地にとっては邪魔なだけです。
湿度があると、クッキー生地の表面に付けた砂糖が溶けてしまうからですね。
また、クッキー生地本体にも湿度は邪魔なだけです。
なぜか???? それは、パン生地はそのままにしておくと表面が乾燥して行きますが、クッキー生地はそのままにしておいても乾きません。
やはりこれも浸透圧の仕業ですが、パン生地の持つ水分は外気よりも多いので、表面から順に水分を奪われて乾いていきます。 他方クッキー生地は、水分をほとんど含んでいない為に、逆に外気から水分を吸収してしまい、いつまでも乾かないと言う訳なのです。
しかし、卵や砂糖が入っている訳ですから、水分が無いと言う訳ではありませんね。
この場合、正確に言うと、蒸発しやすい水分が少ないと言うのが正しいかもしれません。
油脂と砂糖が多い配合の場合、水分は蒸発しにくくなるのです。
理屈ではそうですが、真冬の寒い時にはクッキー生地も乾きますけどね・・・・・
と言う事で、もしも発酵室の温度や湿度がメロンパンに適した温度に調整する事が困難であった場合は、室温でも全く構いません。
ただし、ビニールの袋をかぶせる、あるいはタッパーのようなもので蓋をしておくだけでも、乾燥を防ぐ事が出来ますし、自らの水分で潤って行くと思います。
私の場合は発酵はもっぱらフランパンですが、メロンパンをフライパンに入れて蓋をし、約15秒ほど中火を点火させて消すと、フランパンの中の温度がちょうどいい感じになるからです。
この場合、パン生地の水分が蒸発してクッキー生地が潤って行くのです。
・・・でも、ご質問では室温に出しておくと帽子をかぶったようになると書かれていましたが・・・・ この場合の帽子をかぶったような状態と言うのは、クッキー生地が綺麗にパン生地を包んでいない時に起きる現象なのです。
しっかりとクッキー生地がパン生地を包んでおり、横から見てもパン生地が見えないような状態であれば、よほど乾燥していない限り室温でも問題はありません。
ちなみにこの画像は先日作って冷凍してから2週間経過したものなのですが、しっかりとパン生地がクッキー生地で包まれていることが確認できますね。
業務用ですと、生地を冷凍するにはどうしても改良剤なりを使用しないと難しいのですが、家庭では意外と何も使わなくてもふっくらと膨らむので不思議だなと感じています。 この生地も先日焼きましたがふっくらと完成しました。 けして冷凍をお勧めするものではありませんが、しっかりと力強く膨らんだ生地と言うのは、わりと冷凍に耐えるのだなと改めて認識した次第です。
とは言っても、常温の場合は必ずビニールをかけておく事をお勧めします。
室内にも意外と風の流れがあり、それで乾く事があるからです。
お解りいただけましたでしょうか(^0_0^)
パン生地が発酵して膨らんでいくのと同時に、クッキー生地もしなやかに同じように伸びていき、尚且つ同時に焼けなければならないメロンパン。
お互いの特性を良く理解した上で、トライして下さいね。
メロンパンのクッキー生地というのは、様々なレシピがありますよね。
油脂が少ない方が扱いやすいですが、焼き上がりが粉っぽくなります。
逆に油脂量が多いと、当然しっとりと美味しくなりますが、扱いが難しくなります。
よ~く冷やさないとベタベタしますし、すぐに柔らかくなってしまいますが、どのあたりを選ぶかが分かれ道になると思いますが、おすすめは・・・・ 粉100%に対してマーガリン35~40%です。
タマゴの量も多ければ美味しくなりますが、ベタベタして作りにくくなりますよね。
食べた時のジューシーさとか、カリカリ感とか、しっとり感とか、ご自分の好みで色々と変更して楽しめるのがメロンパンの良いところでもありますから、あまり難しく考えずに色々トライしてみましょう。
次回、もう少し画像を使って解説してまいります。