今回は焼き菓子も少し加わっております。
チョコレート味のカップケーキなのですが、このように割れ方が色々になってしまうのはなぜなのかと言うご質問でした。
一番手前のように全体的に割れているものもあれば、片側だけが盛り上がってしまっているものもありますね。
パンとは違って、ベーキングパウダーで膨らませるこれらのケーキでは、どうしても表面の裂け方がこのように不均一になりがちですよね。
これが許せないという方もいるようなのですが、これは正直なところ難しいでしょう。
解決策があるとすれば、油脂の量を増やすことぐらいしか思いつきません。
また、天板に水を張って蒸し焼きにすると、若干安定するとは思いますが、根本的な解決策にはならないでしょう。
このケーキの場合はココアが配合されていますが、ココアと言うのはああ見えて繊維質が多く、表面がすぐに乾燥してしまうために、特にこのように裂ける感じになりやすいのです。
オーブン内の場所、オーブンの温度設定などによってもこうなってしまうことが多いのがカップケーキなのですが、ここはひとつ味優先でお考えいただいて・・・
では次です。
お馴染みのパウンドケーキですが、おかしな場所が裂けてしまって気になるようです。
裂けた生地の部分をよく見てみると、生地がパン生地のようにしっかりとつながっていることが解ります。
これはまず、ドウが硬いと考えられます。
ドウが硬いと表面の硬化が早くなり、どこから裂けてしまうか解らない状態になってしまいます。
パウンドケーキを上手に焼くコツは、ある程度火が入った時点で一旦取り出し、中央部にナイフで切り身を入れると、そこから綺麗に割れていきます。
にしても、ドウそのものが硬いとわりと不安定になりがちです。
ドウが硬いことと、捏ねすぎた場合、一部強力粉などを使ったような場合、油脂が少ない場合などでも同じです。
また、全体的にふんわりと伸びていないのは、シリコン型に入れたドウの量が型に対して少なすぎるようです。
さいごまで両サイドの壁にはばまれて、開きながら膨らむことが出来ないでいます。
型に流し込んだ時点で、7割程度の高さになるような内容量にすると、もう少しふんわりと膨らむと思われます。
家庭のオーブンだと火加減を細かく調整することが困難ですので、初めの数分は上火が入り過ぎないように、別のシリコン型を逆さまにして蓋をすると良いでしょう。
では次です。
マーブルブレッドのようですが、画像奥を見ると右側だけが大きくなってしまっています。
パン屋さんでもこの手のパンは多く売られていますが、三つの高さを合わせるのは至難の業だといっても良いでしょう。
こちらの画像はまだきれいに出来ている方だといえます。
生地重量や折り込まれているチョコレートの量、そしてさらに発酵室での配置などによってこのように膨らみが違ってきてしまうという、製造者泣かせのパンでもありますね。
細かく言えばキリがないほど様々なコツを要するパンなのですが、丁寧に、そして回を重ねていただく以外に方法はないと思います。
ちなみに画像奥の生地は、右から順番にかなり膨らんでいて、一番左がとてもおとなしくなっています。
手前の画像を見る限りでは、とてもバランスよく成形されていることが解りますので、これはあきらかに発酵室内部の温度が片側だけに集中していることを意味しています。
成形がうまくいっても、肝心の発酵室での温度や湿度の流れを読み解かないとこのようになってしまいますので、たまに場所を入れ替えるなどしてバランスをとることで解決できると思われます。
では次です。
ブルーベリージャムを巻き込んだのは良いのですが、上部に空洞が出来てしまって・・・と言うお悩みです。
いやー十分上出来な方だと思いますが皆様はどう思われますか。
そもそもジャムを巻き込んでこれだけきれいに出来る方が不思議なくらいです。
ある程度硬めに煮詰めたジャムを使用しないとそもそも無理な話なのですが、それでも量によってはもっと大きな穴が開くことがあることは皆さまもすでに経験済みのことでしょう。
それにしても、ほぼ必ずと言っていいほどこのようなパンの場合は上部に空洞ができるものです。
それはなぜかといいますと、中心にいけばいくほど火の通りが弱くなりますので、ジャム自体にも火が入りづらくなり、生地と馴染んでおとなしくしてくれていますが、上部ではジャムにもしっかりと火が入り、沸々と湧いてしまうために、その蒸発した水分で生地内部がツルツルとアルファ化してしまい、空洞となってしまうのです。
細かく見ると、他の部分にも空洞はできてはいるのですが、焼成後に全体的にやや潰れてくるので、そのお陰で隠れてしまうのです。
ただし、最上部はしっかりと火が入っているためにしぼんでは来ませんので、ジャムの重さに耐えかねた生地だけがやや沈むことで、より空洞が目立ってしまうのです。
ここまでで仕上げることが出来た時点で、すでに素晴らしいと言えるでしょう。
解決策はないわけではありませんが、原材料や配合の違いによって対応が変わってくるために、ここでご紹介することは出来ません。
では次です。
ご家庭で一番多く作られているであろう焼き込み調理パン。
大人から子供までみんな大好きで、しかもアレンジが行いやすく手作り感が出せるのも人気の秘訣でしょう。
とは言え、なんか食品サンプルっぽい、作りものっぽいというご意見もあるようです。
通常しっとりと柔らかいパンであれば、若干表面にしわが出来ます。
しかし画像のパンはテカテカでツルツルとしています。
これはいわゆる捏ねが足りていない状態、つまり生地が緩やかに伸びてはいない状態なのです。
そうなりますと、内部に気泡が少なく目詰まりしていますので、焼成後すぐに硬くなってしまいますし、消化にも悪いパンになります。
また、捏ね以外にも発酵不十分な生地の場合にこのようになります。
これは、ある程度イーストの量が多い分発酵時間が短いレシピなどによく見られる現象なのですが、しっかりと発酵が行われていないパンと言うのは、このように形状こそ安定していますが、パン本来のソフト感とかしっとり感というものはありません。
温かいうちに食べれば美味しいパンかもしれませんが、時間の経過と共にとても締まってきて硬いパンになり、極端な表現をすると翌日にはパサパサになってしまうでしょう。
パンの美味しさとかしっとり感というものに不可欠なのは、焼いている最中に生地が伸びながら焼けているかどうかという点で、オーブンスプリングという表現をよく使いますが、しっかりとオーブンの中で伸びながら焼けていくことで表皮は薄くなり、そして内層に火が入りやすくなるのです。一見見た目の良いおとなしい生地のように見えますが、どうしても表皮が厚くなり、目づまりしたパンになってしまいます。イースト量はけして多すぎず、出来るだけ柔らかい生地にすること、生地温度はやや低めにすること、そして時間に制約があるようなときには、生地を冷蔵して低温発酵させるなどして、パン生地に一番必要な発酵時間を短縮するようなことがないようにしてほしいと思います。
ご家庭でのパン作りでお悩みの方から、最も多くいただくお悩みが「パンがすぐに硬くなるのはどうしてか」というご質問です。
この点パン屋さんでは、常に多くのパンを作っていますので、むしろ生地の発酵時間は取り過ぎてしまうことの方が多く、どうやったら短くできるのかが逆に解らないくらいなのです。
しかし、ご家庭では3個・4個の世界だと思いますので、例えばベンチタイムだけをとっても、「丸めました」「ここから20分何しよう・・・」「成形しました」「ここから1時間何しよう・・・」となるわけで、時間の使い方が非常に非効率になりがちですよね。
ですので、ご家庭でパン作りを無駄なく行う秘訣は、ある程度色々な種類をたくさん作ることです。
そうしますと、次から次へとやることが多くなり、ベンチタイムがとても短く感じられますし、次々と焼いていかなければなりませんので、オーブン内も安定してくると思いますよ。
かく言う私も家庭でパンを作る時には、最低でも4種類、合計50個以上は焼いてしまいますので、当日だけでは食べきれません。
「お隣さんに分けようか・・・」と言うのですが、絶対にそこにはうなずいてもらえません。
作り手としては嬉しい限りですよね。
どんなに成形が上手でも、原材料にこだわっても、肝心なところを見逃すとパンは味気ないものになってしまいます。
むしろ、形や技術にとらわれることなく、発酵時間を十分にとった風味豊かなパンを作っていただきたいと思います。