以前に画像だけご紹介したヘルンヘンですが、その後も何度か作り、「いや~やっぱり美味しいわ~」と感じた次第でしたので、今回改めてご紹介しておきたいと思います。
ヘルンヘンそのものは形を表していますので(ドイツの角パン)いかような生地で作っても構わない訳ですが、基本ハード系のパンに属することになりますよね。
塩味を中心として、ほんの少しの砂糖や油脂を混ぜて作ることが多いと思うのですが、今回は北海道産のライ麦全粒粉を使ってライ麦パンとして作りたいと考えました。
なぜか・・・??
それは単にライ麦パンが好きだから・・・なのですが(笑)
本当はライ麦パンと言うのはサワー種を作ってライ麦粉を70%以上は使いたいところなのですが、今はとても自家製サワー種を作っている時間的ゆとりがない環境ですので、イメージとしてはフランスパンにライ麦粉をブレンドしたパンと言うイメージで、なおかつどうせなら全粒紛の方が風味が格段に良くなるであろうと考えて作ったところ、最高の出来栄えになりましたのでご紹介する次第です。
ライ麦パン=酸っぱいパンでは??と勘違いされている方々もいらっしゃると思いますが、どちらかというとライ麦の比率が多いドイツパンだと確かに酸っぱいパンが多いのですが、今回のように小麦粉の比率の方が多い場合は特にサワー種を使いませんので、通常のフランスパンのような風味のパンになります。
なぜライ麦粉を使うのかと言いますと、小麦粉とは全く違う味・風味・食感のパンになるからです。
技術的に言いますと、ライ麦というのは捏ねるとベタベタとしていて、単独だととても扱いが難しいのですが、小麦粉とブレンドすることによってやや扱いは難しいものの、かえっておとなしい感じの生地となり、成形が安定したり焼き上がりが安定するという利点もあるのです。
そして何よりも、いつものフランスパンとは一味違うフランスパンになるということで、是非皆様にも作っていただきたいと思います。
ではまず配合から
<ベーカーズパーセント>
強力粉 70%(春よ恋)
ライ麦全粒粉 30%(江別製粉)
上白糖 2%
塩 2%
ユーロモルト 0.3%(なければいらない)
ショートニング 2%
発酵種 40%
水 68%
強力粉に関しては何を使われても構いませんが、個人的には最近ではもっぱら春よ恋だけ使っています。
理由はバツグンに味がいいのに、外国産に負けないくらいコシも強いからです。
ライ麦粉だけではありませんが、全粒粉というのはとても虫が湧きやすい粉になりますので、冬場は良いのですが夏場は必ず冷蔵庫で保存するようにしましょう。
ユーロモルトや粉末のモルトというのは、特別に入れなくても大丈夫なのですが、風味が若干良くなる、色付きが若干濃くなる、発酵が安定するという利点がありますので、もしフランスパンが好きで良く焼くという方は揃えておいた方が良いでしょう。
発酵種に関しては以下を参考にしてください。
生地作り
発酵種以外の材料をボールへ入れて混ぜていきます。
粉っぽさが無くなるまでよく混ぜたら、発酵種も入れてよく混ぜます。
生地がひと固まりになりましたらボールから取り出し、体重をかけながら揉み込んでいきます。
ショートニングは少量の時には初めから入れた方が良いと思います。
体重をかけながら何度も畳むように揉み込んでいき、叩いたりズリズリする必要はありません。
いつも菓子パンやロールパンなどで行っている「薄い皮が張るまで捏ねる」というようなことはせず、べた付きますがやや硬めの生地ですので、しっかりと揉み込んでいきましょう。
約5分も揉めばOKで、生地はベタベタのままだと思いますが、そのままボールへ移してラップやビニールで蓋をして、第一発酵を20分とっていきます。
捏ね上げる温度はハード系の場合は平均的に24℃くらいが理想となります。
冬場はどうしても発酵中に冷えたりしますので、食器棚の上とか冷蔵庫の上とかの温かい場所で発酵させましょう。
全てを投入して低速5分中速3分程度でOKです。 発酵工程は40分パンチ40分で分割に入ってください。
パンチ①
いつもご紹介している通りパンチで生地を作っていきますので、捏ねて20分経過した生地をボールから取り出して丸め直す、あるいは多めの場合は畳んでいきます。
まだ若干ベタベタはしていると思いますが、構わず丸め直して、表面をきれいにしてまたボールに移し、再び20分発酵をとります。
パンチ②
発酵から40分経過しましたので、若干べた付きもなくなり膨らみも出てきたと思います。再びボールから取り出して丸め直すか畳みなおしますが、これが最後の丸め直しになりますので、べた付くようでしたら手に粉を付けながら表面を滑らかにしてボールへしまってください。
この時ボールに生地が残っているようでしたらしっかりカードなどで取り除き、キレイなボールに滑らかになった生地を入れるようにしましょう。
この後は40分発酵をとって分割を行います。
合計80分の発酵時間となります。
ヘルンヘンの成形
ヘルンヘンの成形というのはちょっと難しいです。
なんとなくクロワッサンのような形になっていればいいかな・・・程度でしたら難しく考える必要はないのですが、本来この成形に込めらた意味と言うのは ”外はカリッと中はムチムチ” という食感ですので、とりあえずここでは成形画像を使って説明していきますが、だからと言ってすぐに出来るというものでもありませんので、どうか軽い気持ちで見ていただきたいと思います。
成形には厚手のプラスチックまな板がオススメです。
なぜかと言いますと、適度に突起があって滑り過ぎずくっつき過ぎない性質で成形しやすくなるからです。
ヘルンヘンでもバゲットでも色々な成形手法があるとは思うのですが、私の場合はヘルンヘンはこのようにベンチタイムをとった後の丸い形そのままから成形に入っていきます。
まずは中心部より右上に向かって生地にきつめに麺棒を入れていきます。
次に中心部から左上に同じくきつめに麺棒を当てていきます。
この時麺棒には生地が付かないように生地表面には少しだけ粉が付いている方が良く、まな板に接する生地面には粉がないようにしてください。
そうすることで、伸ばした生地が薄くまな板に接着するようになります。
生地上部の右端左端がまな板に接着した状態で、今度は生地の下を左手で引っ張りながら、右手で麺棒をきつめに当てていきます。
二等辺三角形のような形になればOKです。
一度生地を1分程度休ませたら、再び先ほどと同じように右上部左上部、そして下方へとうすくのばしていき、
こんな感じのうす~い形にします。
この際に生地は戻ろうとする働きをしていますので、生地とまな板との接着面に粉が付いているとすぐに戻ってしまいますが、画像のようにまな板にくっついている状態だと伸びたまま落ち着いてくれます。
ここまで薄くしっかりと伸びていれば大丈夫なのですが、実はこの薄く延ばすというのがとても難しいでしょう。
ほんの少しの手粉のつけ方の差で、もどってしまったりくっつきすぎてはがれなくなったり、あるいは麺棒に生地がくっついてしまったり、あるいは生地に何度も何度も麺棒を当ててしまうと生地がぐったりしてしまいます。
そうなるとこの後の巻き込みがうまくいかずに、理想的な成形が難しくなりますので、挑戦したい方はしっくりいくまで頑張ってチャレンジしてみてほしいと思います。
ここまで薄く、しかも適度に緊張した張りのある伸ばし方が出来たとしたら、上部の方からやや外側に向かってきつく巻き込んでいきます。
右手で上から下へ巻き込んでいきながら、左手は生地の下部を引っ張りながら伸ばしていきます。
右手の平で少し強めに押しながら巻いていく感じです。
(右手で強く生地を抑えながら巻いていき、左手は下へ逃げていく感じで)
そのようにしてたくさんの巻き数を作っていくのです。
こんな感じできつく巻き込んでいくことで、外側がカリッと焼き上がり、クラムは細かい巻き数でもっちりと仕上がるのです。
ホイロを短めにして早めに焼成することも、このキメ細かいクラムを楽しむためのポイントとなります。
せっかくうまく成形できたとしても、ホイロをしっかり取ってしまってはふんわりとしたパンになってしまうので注意が必要です。(ホイロは長くても30分程度)
この手のパンはいつもよりも強火で、多めのスチームを使ってしっかりと焼き込むことが大切です。(できれば15分以内)
チーズを入れたライ麦パン
この生地でバゲットを焼いたりプチパンにしたり何でもありですが、基本的に香ばしさを強調できるパンにしてほしいと思います。
私も様々作りますが、チーズなどを入れた特に大きなパンにした場合に良く起こりがちなことがあります。
それがこちらの画像のような穴あきです。
重い具材、溶ける具材、濡れている具材を巻き込んだ時に良く起きる現象ですが気になりますよね。
かじってしまえば同じだとも言えますが、売り物の場合にはそうはいきませんよね。
特に大きなパンの場合だとスライスもするでしょうから、空洞があると困りますね。
こうなってしまう原因はいくつかあるのですが、技術的な部分で解決しなければならないのはコシのある成形を行うということにつきます。
◎延ばした生地にハリがあること
◎巻き込む際にもコシを意識して巻き込んでいくこと
◎チーズは満遍なくちらすこと
捏ね上げ温度が低い場合や、ベンチタイムで生地が冷えてしまったときにもこのようにチーズの重さに耐えられない生地になることがあります。
また、一つのコツとしては生地にチーズをまんべんなく乗せたら、チーズを生地に押し付けて埋め込むようにしてから巻くと良いでしょう。
ちょっと解りずらいかもしれませんがチーズを生地に押し込んでから、きつく巻いていくという感じです。
するとこんな感じになるでしょう。
また、大きめのパンというのは実はオーブンの性能によって焼け方が全く違ってくるのですが、こればかりはあるもので対応するしかありませんので、大きなパンが綺麗に焼けない、いくらやっても空洞が出来てしまうというような場合には、残念ですが小物のパンを作っていただくしかないでしょう。
弱い火でじっくり焼いていけば空洞はできませんが、それではパンとして台無しです。
パンの中心部にしっかりと火が入るような構造になっているオーブンなら問題なく焼けるのですが、そのように説明書には書いてはあっても実際には向いていないというものもかなりあるのが実情です。
どのような成形でも、香ばしさともっちり感が格別なパンになりますので、色々と試してみてほしいと思います。
というよりも、多めに作って残りを冷蔵庫で保存して明日以降に焼こうということです。この際残った生地はしっかりと潰して(ガスを抜いて)タッパーなどで保存しますが、生地に対してあまり大きなタッパーを使うと生地上部が乾燥してしまいますので、その際には生地に直接ラップをくっつけて蓋をし、さらにタッパーの蓋をするようにしてください。翌日以降使用する際には、必ず生地の温度を20℃位にしてから分割成形してください。生地が冷たい状態で分割成形をすると、ベターッとしたパンになってしまいますので注意してくださいね。