家庭でパンを焼かれている方は多いと思いますが、こちらのカテゴリでは発酵のさせ方について色々と解説していきたいと思います。
本館である
発酵器を使いこなしましょう - ベーカリーアドバイザーの部屋
にて書いてきた過去記事を参考に、さらにさらに細かくご理解いただけるようにしていくつもりですが、それでも理解できないところがありましたら、遠慮なくご質問いただきたいと思います。
パン捏ね器を使って、特にアレンジを加えない人もいれば、途中で生地を出してあれこれとアレンジして色々なパンを作り出す達人もおられるでしょう。
また、一から手で捏ねることにこだわりを持っておられる方も多いと思います。
いずれの場合も、パン生地を発酵させる場所には様々な工夫を凝らしている事と思います。
今回は、あくまで全てを手作りする方が使う発酵器具、あるいは発酵に対する考え方について説明して行きたいと思います。
小型の発酵器を持っている・・・と言う人は、それで十分です。
以後も温度湿度に十分注意して使いこなしてほしいと思います。
特に何も持っていないと言う人・・・ハイ、私です(笑)
皆様はどのような方法でパンを発酵させているのでしょうか?
他のカテゴリと重複すると思いますが、あらためて生地の発酵管理の注意点を述べたいと思います。
パン生地の捏ね上げ温度は、必ず目標温度通りになる方が安定はします。
それでも、たまにしか作らないとそうはいかない事がありますね。
そんな時には、その後の発酵時間で調整して行くのです。
例えば、27℃の希望捏ね上げの時に30℃になってしまったという場合、 発酵室の温度を25℃前後の低温にして、生地温度がそれ以上上がらないように工夫します。
希望よりも低かった場合は、上記の逆で発酵室の温度をやや高くして発酵時間をとって下さい。
基本的なレシピの場合、希望温度よりも1℃違えば10分程度時間を延ばしたり短くしたりして調整しますが、家庭で作るパンの場合は、通常よりもイースト菌の配合量が多い事がありますので、あくまで生地を良く見て判断して下さい。
とは言っても、その判断こそが実はパン作りの最重要ポイントであり、ホームベーキングにおける最高技術の一つになりますゆえ、今後画像などを通して嫌というほど説明していきますので、とりあえずここは読み飛ばす気持ちであまり考えすぎないようにしてください。
イースト菌の量とか種類によって考え方は様々なのですが、細かくは別のカテゴリでふれますので、ここでは「へ~そうなの・・」程度で構いません(笑)
そして、分割までの時間は、なるべく発酵室の温度を変化させないようにする事が大切なのです。
パン生地は、温度変化が大嫌いですから。
生地の捏ね上り温度には気を配る人もいると思いますが、分割したり成形したりしている間に、意外にも温度はかなり変化していることが多いのです。
つまり、発酵中というよりも作業中の室温とか、生地への触れ方、成形場所などで温度が変わってしまうことが多いということですね。
家庭でのパン作りの場合、ここで生地が乾いてしまうというのが最も多い失敗の原因です。
ベンチタイムでは、生地の乾燥に細心の注意を払いましょう。
そして、成形時に生地の表面が乾燥していないようなら、生地管理はバッチリとなります。
ということで、成形終了までに特に注意しなければいけないポイントは、
乾燥は大敵である ということですね!
かと言って、生地が濡れていても同じく駄目ですよ!
乾いていなくて濡れてもいない、しっとりとした肌の様な感触でなければいけません。
では、これらの条件をクリヤーするには、どのような器具を使って発酵を取るのが良いのでしょうか?
ここで考えなければならないのが、
生地を入れる入れ物と、それを入れる場所 、
この二つが重要だと言う事なのです。
生地を入れる入れ物で最適なのはビニール製品です。
いわゆるタッパーがいいと思います。
あるいは、プラスチックのボール。
ステンレスの入れ物は、生地が冷えやすくなりますのでお勧めしません。
ステンレスや金物は、温度に敏感なので、生地発酵には向いていないのです。
ビニールやプラスチック製品は、温度に鈍感なので、生地温度を変化させる事がなく、パン生地の保管には最適なのです。
生地量の2倍位の容量のタッパーなどに生地を入れ、同じくタッパーの蓋をするか、ラップをかけます。
タッパーには、あらかじめサラダ油などを薄く塗っておくと、生地がタッパーに付かないので作業がしやすくなるでしょう。
ただし、塗り過ぎは禁物です。
もちろんバターやマーガリンでも構いませんし、薄く粉を振っても大丈夫です。
また、保管の際に布を使ったり、濡れ布巾をかけたりするのもいけません。
パン生地は、自分の持っている水分で勝手にうるおいます。
ですから、パン生地に直に水分を与えるような状況は好ましくないのです。
発酵器に入れる場合でも同様で、必ずパン生地を外気に触れさせないようにしておく事が大切なのです。
次に、それを入れる(保管する)場所ですが、基本的には27℃以上35℃までの場所となります。
冬ならこたつの中、あるいはストーブで温まった部屋の中と言うように、あまり温度の上がり下がりが無い場所を選んでください。
夏ならそのままで大丈夫かもしれませんが、必ず蓋はしてください。
特に冬は乾燥しますので、お湯を沸かして部屋に湿気を持たせておく事が大切ですね!
パン生地にとって適度な温度と適度な湿度とは、ちょうど梅雨の頃のあのじめじめとした時期と同じなのです。
ですから、人間にとって最適なさわやかな季節は、パン生地にとっては乾燥注意報の季節なのです。
少し付け加えますが、パン生地の量よりもはるかに大きいタッパーだと、生地は乾きます。
あくまで大きすぎない物を用意して下さい。
部屋が乾燥していないのに、タッパーの中の生地が乾いていたら、それは生地の捏ね上げ温度が高いのです。
逆に濡れていたら、捏ね上げ温度が極端に低いのです。
生地の表情に常に気を使う訳ですが、時間が来たから分割する・・・ではなく、生地がどんな感じになっているのかを観察することがホームベーキングではとても大切なのです。
一見発酵は科学だと捉えられがちですが、それは微生物の活動という領域の話です。
パン作りというのはやはり、手で感じて鼻で感じて目で感じてというように、五感が物を言う技術ですので、ご自分の感性を信じて、そしてさらにさらに五感を磨いていくことで、目覚ましく向上していけます。
ですのでどうぞ、色々と失敗してもめげずに続けて下さいね。