やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

パン作りで大切なのはやっぱり小麦粉??

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小麦粉に関しては、ホームベーキングではあまり選択肢が無く、パン屋さんだけが色々な小麦粉を使えるという認識で今まで来ました。

しかしながら現代はネット社会です。

家庭に居ながらにして、パン屋さんと全く同じ小麦粉を簡単に購入できる時代になり、家庭においては特に、国内産小麦を多く使用していると言う現実があります。

外国産小麦ならパン屋さんでパンを買えば済む事で、あえて自分で作るからには安心安全な国内産小麦を・・・そんな観点からか、上級者になればなるほど国内産小麦を使っていると言う事実が、私に頂く質問を通して感じ取れます。

その反面、小麦粉に関する質問がかなり多いという事実。

これは、小麦粉の選び方や使い方に自信が無い表れであると推測できます。

小麦粉に関しての質問は、意外とプロの方からも多い(@_@;)

と言う事で、パンを作る上で最も大事な???もっともメイン材料であるところの小麦粉について、色々と書いてみたいと思います。

まず今回は、どんなパンを作る時にどんな小麦粉を選べば良いのか・・・・ そのあたりから解説して行きたいと思います。

 

パン作りは小麦粉選びから・・・

 

ご質問で一番多いパンは、何と言っても食パンです。

誠に不思議ですが、パン屋さんで必ず売り上げ上位にあるのも実は食パンであり、それは有名店になればなるほど顕著にあらわれます。

売れているのも食パンで、作る場合の疑問も食パンだなんて、皆さんどんだけ食パンが好きなんでしょう~

ちなみに、色々なパンの種類があるのは皆様ご存知だと思いますが、そんな中でなぜ食パンがダントツなのか?

何か付けて食べないといけない面倒くさいパンでありながら、なぜサンドイッチやカレーパンがダントツ一位ではないのか? お解りですか (^0_0^)

それは、パン食の世界において、食パンだけが食事用のパンとして広く皆様に認知していただけたからなのです。

ではそれ以外のパンはと言うと、食パン以外はすべておやつ、もしくは間食と言うジャンルなのです。

もちろん菓子パンやサンドイッチで食事を済ます方は大勢いらっしゃいますね。

しかし、全体的に見ればそれは昼食のごく一部にすぎず、トーストした食パンのみがご飯の代わりとして主食の地位を勝ち取っているのです。

特に朝食ではダントツでしょう。

ご飯・麺・食パン、このいずれかを主食として朝食を済ませていると言う方が圧倒的多数だと思います。

ですから、パン屋さん商売繁盛の秘訣はズバリ、どんな食パンを作るかにかかっているのです。 ・・・??。。。 いかん、また脱線してしまっている (~_~;)

本題に戻りましょう。

小麦粉を選ぶ際に最も気にしなければならないのは、蛋白含有量です。

なぜならば、この蛋白こそが米粉や他の粉には無い風船の正体だからですね。

小麦粉は大きく分けて、力の弱い順、つまり蛋白の含有量の少ない粉から順番に 薄力粉・中力粉・強力粉・最強力粉と言うように、名前のまんま表現されています。

このうちパンに使うのは、強力粉がメインとなる訳ですが、色々とこってくると、様々な小麦粉をブレンドする人が増えて来るのです。

ブレンドする意味は、人それぞれのこだわりだとは思いますが、それぞれを混ぜてパンになった時に、果たしてブレンドしただけの効果があったのかどうかを見極める事ができているのか、それははなはだ疑問です。

この見極めは、正直非常に上級者向けだと言えるでしょう。

ただレシピにそう書いてあるからそうしているだけ・・・と言う人も多いと思います。

もっと言うなら、国内産小麦を使って安心安全でフワフワのパン作り・・・

こんなキャッチフレーズを信じて、外国産小麦は悪で国内産だけが善だと思いながらも、どうしてもフワフワにならずに困って質問してくる方々が多数なのです。

安心安全を信じて国内産小麦だけを推奨するのであれば、多少出来が悪くたって安全なのですから我慢してほしいと思うのですが・・・

しかしそこだけは売っているパンを見本として比べてしまっている・・・・

そもそも、もっと小麦粉の美味しさや扱い方を知った上でどの小麦粉を選ぶべきかを決めないと、まともなパンは作れません。

 

とまあパン屋さん向けにはこのように多少厳しめに言ったりしているのですが、ぶっちゃけご家庭では何でも構いません。

ただし、違いがかなりあるということだけは確かなので、徐々に色々と試しみて、その違いを是非実感してほしいと思っています。

 

大抵の国内産小麦は、非常に蛋白の含有量が少ないか、質そのものが弱い傾向にあるからです。

国内産小麦で外国産小麦並みに力が強い小麦粉というのは、まだまだごくごく一部であり、各地方で作られている国内産小麦に関して言えば、そのほとんどは中力程度の力しかなく、それだけでパンをふっくらさせようというのは、かなりハードルが上がるのです。

 

この記事は2011年に書いたものを一部抜粋しています。

2020年現在では、外国産小麦よりも力の強い国内産小麦も出回ってきていますが、種類はやはり少なく、そして値段が高く、そして生産量はまだまだ少ないのが実情です。

 

そこで大切になってくるのが、自分の技量にあった小麦粉選びなのです。

スーパーなどで一般的に販売されている小麦粉である日清カメリヤは、強力粉ですから、いかなるパン作りにおいても、そこそこのパンを完成させる事が出来ます。

しかし、まだ始めたばかりで経験が浅い人や、何度も膨らみの悪いパンを完成させてしまったと言う人は、これよりも少し力の強い、いわゆる蛋白の含有量の多い小麦粉である最強力粉と言う小麦粉を使ってみて下さい。

かなりの違いで、ふんわりしたパンになると思いますよ(*^_^*)

強力粉も最強力粉も、食パンをはじめほとんどのパン作りに使用できますので、まずはここがスタートと考えてお使いいただくのが良いと思われます。

ちなみに日清カメリヤのタンパク含有量は 11.8%

同じく日清の最強力粉であるスーパーキングのタンパク含有量は 13.8% 

また、日清の薄力粉であるスーパーバイオレットは タンパク含有量 6.5±0.5% となっています。

この蛋白含有量は、通常袋には書かれておりませんので、ネットで商品説明などを見ると書かれていると思います。

カメリヤで11.8%ある風船含有量の小麦粉で、上手く膨らんだパンが完成しない場合は、13.8%のスーパーキングを使ってみるか、あるいはそれと同等の蛋白を含んだ他社の小麦粉を試してみるのが良いと思います。

この場合、味の点ではなにか変化があるのでしょうか?

それは、好みの問題と言う程度の違いですが、もちろん違いはあります。

と言うのは、小麦粉を製粉する上において、小麦の中心部ほど色が白く上質で、外側に行くほど色が茶色になり、穀物臭がしてきます。

穀物臭というのは、解りやすく言うとわらとか畳みのような匂いとでも言いましょうか・・・

しかしながら、小麦と言うのは外側に行くほど蛋白含有量が増えて行きますので、力が強い小麦粉ほど色がやや黒く、穀物臭のような独特の香りが強くなるのです。

その独特な香りが好みに合えば美味しいと感じるでしょうし、やはりご飯も玄米入りよりも断然白米と言う方には、すこし個性が強すぎるかもしれません。

カメリヤよりも、より小麦の中心部の白い部分をだけを使って作られているのがスーパーカメリヤであり、その分カメリヤよりは若干力は弱いのです。

そして、カメリヤよりも外側の麦を使ってあるのがスーパーキングであり、力は強いが若干くせがあるということになるわけです。

 

まあ穀物臭といっても、ご自分で全粒粉とかふすま(小麦の皮)を入れる人もいるくらいですから、臭いというほどのものではありませんし、私は個人的には何にでもふすまを混ぜたりしています。なぜなら断然コクがでるからです。

ただし、全粒粉とかふすまを入れるとパン作りはとても難しくなりますので、これまた慣れてからお使いいただくのが良いと思いますよ。

 

ということで、ここまでの小麦粉選びということで言いますと、

 

まとめ

1、パン用粉・強力粉 なら何でも良し。
2、ただし、膨らみに自信がないようならスーパーキングを使うとより膨らみが良くなる。
3、そしてスーパーカメリヤなら、もっとキメ細かく味のいいパンになる。

 

と言うことになります・・・めでたしめでたし!

 

 

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焼き印を入れるパン屋さんも意外と多い

 

小麦選びは味優先か、それとも製パン性??

 

 一般的な強力粉を選んでおけば、それなりの、と言うかかなりの高品質のパンが焼けると言う事はもうお解りいただけたと思います。

それは、パン屋さんで一番多く使われている小麦粉も、ホームベーカリーで使われている小麦粉も、そのほとんどが大手製粉会社の小麦粉であるからです。

しかし、ちょっと冒険して、自分独自の味を追求してみたい・・・

または、もっとフワフワにさせたい・・・

または、噛み締めるほどに味わいのある、シンプルなパンを作りたい・・・

一般的な製パン技術が身についている人なら、そう思うのは当然ですよね。

ただ、未熟な状態では危険がともないますよ(~_~;)

あくまで基本的なパンが作れるようになってからの挑戦と言う事でお願いしますね(*^_^*)

では、自分好みの小麦粉を探す時のポイントを見て行きましょう。

それは大きく分けて四つ程あります。

 

一つは蛋白の質と量です。

 

一般的に蛋白の量は、各小麦粉の成分表に書かれており、それが多いほどすなわち風船の量が多いと言う事になります。

しかし、風船の質は使ってみなければ解りません。 つまり、パンにしてみないことにははっきりとは言えないと言う事なのです。

同じ蛋白量の小麦粉であっても、風船の強さが大きく違う場合があります。

それは、数種類のタンパク質が存在する中で、パンにとって最も大切なたんぱく質であるグルテニンとグリアジンの含有量が多いか少ないかによって、製パン性が違ってくるからなのです。

この二つのタンパク質を合わせて、グルテンと呼びますが、このグルテンの強さがすなわち風船の強さになる訳です。

質の良い風船の場合は、まるでビニール風船のように何処まで膨らませてもなかなか割れません。

しかし、同じ風船でも、まるで紙風船のようではすぐに割れてしまいますよね。 それ程の差は実際には実感できないかもしれませんが、それ位質というのは違う物なのです。

これは、前者が外国産に多く、後者は国内産小麦に多く観られる現象と言えるでしょう。

ですから、国内産小麦を使うと言う事は、同じ蛋白量であっても、膨らみの違うパンが完成してしまうと言う事は大いにあるのだと言う事を認識しておかないとなりません。

 

二つ目は灰分の量です。

 

灰分(リン、カリウムマグネシウム、カルシウム、鉄などのミネラルです)が圧倒的に多いのが、全粒粉と言う丸ごと麦を使った粉ですが、それはつまり外皮に近い部分を多く含んでいる粉であると言う事がいえます。

そこまで多くなくても、蛋白の量が多い小麦粉を選ぼうとすると、どうしても小麦の外側を製粉する事になりますので、外皮部分が多い粉になってしまうのです。

灰分が多いと言う事は、外皮に近い部分が多く混入していると言う事ですから、当然小麦の中心部を製粉した小麦粉よりも色が茶色になります。

また、その分外皮の香りといいますか、麦の香りと言いますか、ワラ臭いと言いますか、特有の香りが強い小麦粉になるのです。

それを個性として生かせば、風味豊かなパンとなりますが、一般的には白米主義の日本人が多い為に、色の濁ったパンはあまり受け入れられないと言うのが現実だと思います。

 

皮の部分に栄養価が多いということは割と誰でも知っていることだと思いますが、そうとは言え、農薬などの残留があるとすればそれは皮でしょう・・・

なので、皮の部分の栄養価を得ようとすると、どうしても安全面を考えて無農薬とかオーガニックを選ばざるを得なくなり、種類が少なく高額であるということに行く付くわけですね。

 

他方、玄米好きで、パンも全粒粉パンしか食べないと言う方々もいらっしゃいますので、この部分はあくまで好みの問題であると言えると思います。

ただはっきり言えるのは、色はかなり違うので、食パンにしてスライスしてみると一目瞭然でしょう。

また、力が強いのに色が白い小麦粉も存在しています。

これらは恐らく、白い小麦粉に蛋白のみを別配合して力だけを強くしていると考えられます。

小麦粉の袋なり成分表を良く観ると書かれていたりしますが、ただ単に麦を粉にしているだけではなく、色々な種類の麦や蛋白や食品添加物などを配合して、専門的なパン用の小麦粉を作り出している場合もある訳ですね。

小麦と一口に言っても、あくまで穀物ですから、収穫の時期や発育時の天候や環境によって性質がまちまちになると言う事は当然ありうるわけです。

そのたびに今回の小麦粉は出来が悪いので、良くパンが膨らまないでしょう、ご勘弁ください・・・と言うわけには行きませんよね。

ですから一定の品質になるようにある時は水分を補給したりもしますし、力がいちじるしく低下していた場合は、それなりに力のある小麦をブレンドするなどの工夫がなされているはずなのです。

しかし、製粉の実態は会社によってちがうでしょうから、実際のところは解りません。

あくまで推測です。

フランスパン専用粉とか、冷凍生地専用粉など、用途に応じて作られている小麦粉がありますので、一度試してみる価値はあると思いますよ。

 

三つ目はデンプンの質です。

 

これはさすがに焼いてみない事には誰にもわかりませんが、生地の感触でなんとなくの違いは解るとは思います。

そして、このデンプンの質が良く量も多いと、モチモチとした食感が得られるのです。

なんとなくモチモチとしたパンになった、あるいはいつもよりも日持ちがする・・・

そんな事を実感できる小麦粉に出会えたときは、その特性は大いに発揮されるでしょう。

このモチモチ感は、外国産でも国内産でも同等に存在していると思われます。

イメージとしては、やはりうどんでしょうか。

うどんにした時に、最高のモチモチ感が得られる小麦粉は、パンにしても当然モチモチとするはずです。

と言う事は、強力粉や最強力粉よりも、うどんに多く使用される中力粉に含まれているデンプンの質は非常に良いとも言えると思います。

しかし、勘違いしてはいけないのは、デンプンは製パン性を助けてはくれません。

むしろ生地はややベタベタすると思いますので、あくまで味の追求の為に少量をブレンドするなどした方が無難でしょう。

逆にあまりソフト感を求めないパンを作るのであれば、うどん専用粉だけで作った方が味は良くなると思います。

 

四つ目は小麦粉の粒度です。

 

粗さと言った方が解り易いかもしれません。

小麦粉の粗さは、製粉会社というか、製粉方法によって違ってきますが、これを我々消費者が見分けるには、一つには手で感触を見分ける方法、次にミキシング時の生地のつながり方による見極め、あるいはパンを焼いた時の膨らみ方によって判断するしかありません。

この中で、意外と誰もが判断しやすいのが手触りなのです。

ミキシングや窯伸びなどは、技術にもよりますので、判断が難しいと言えます。

そんな中、意外と敏感なのが手のひらなんですね~

サラサラとした感触で、手にこびりつかないほど粗く、ややジトジトとしていて手にくっつく感じほど細かい粉なのです。

薄力粉を思い浮かべて下さい、 超ベタベタするでしょう・・・

あれが目の細かい小麦粉なのです。

細かいがゆえに手にくっつくんですね~

一般的に目の粗い小麦粉は、扱いが難しい代わりに味とか風味が良いパンになります。

目の細かい小麦粉は、扱いやすく良く膨らむパンになりますが、やや風味に欠けると言われています。

結局、作業性を重視するのか、味を重視するのか・・・を問われる事になる訳ですね。

さて、最強力粉や強力粉や中力粉、はたまた専用粉など、様々な力の違いがあるとともに、味の違いや色の違い、さらにはモチモチ感の違いや風味の違いなどについて書いてきました。

では実際に、それぞれの小麦粉を使ってパンを作る際には、どのような事に注意しながら作業を進めていけばよいのか・・・・ については、またまた次回と言う事で(~_~;)