天然酵母のパン屋さんがずいぶん増えましたね。
(この記事は10年ほど前に書いたものを編集しています)
この場合の天然酵母とは、一般に売られているイースト菌以外の酵母の事を指します。
つまり、イースト菌は天然酵母ではない・・・と考えられているのです。
というよりも、イースト菌というのは化学的に作られたものだから、体に良いわけがない・・・みたいな誤解を抱いている人が相変わらずいるのです。
このような考えの人達からすればイースト菌以外が天然酵母なのですから、各メーカーから販売されている天然酵母と言う商品をイースト菌の代わりに使用すれば、天然酵母のパン屋さんが出来ると言う事になります。
よくベーカリーに行くと ”天然酵母パン” と言って数種類売られている物がありますね。
これらのほとんどが、メーカーが販売している天然酵母という商品を使用して作られているものだと言えます。
メーカーが販売している天然酵母と、自分で自家製する天然酵母とでは、いったい何がどう違うと思いますか?
これは、解り易く言うとメーカーの酵母はやはり安定はしていますが、特に美味しいパンが出来るとは言い難いですね・・・あくまで個人的見解ですが(^_^;)
このメーカーの天然酵母を使用しても、イースト菌よりも長時間の発酵が必要であり、生地の取り扱いはイースト菌のパンよりも格段に難しくなりますので、いかにも天然酵母だぞ~・・・という気持ちにはなりますね。
他方自家製の酵母となると、その素材は様々でしょうし、それによって商品の完成度もまちまちですから一概には言えませんが、不安定であると言う事と、腐敗を見分けずらいという難点はあるでしょう。
少しの油断ですぐに雑菌が繁殖しますから、いつでも安定したパンを作るという点においては、かなりの技術が必要となります。
そもそも、イースト菌の何が不満で天然酵母を使用するのでしょうか?
それはまず、イースト菌そのものが化学的に作られた物であって、安全ではないと考えられていると点と、あくまでイースト菌で作られたパンの香りに満足していないという点の二通りに分かれると思います。
酵母づくりから全てを自家製にすることで、すべてがオリジナルの手作りパンと言える・・・
そう考えて酵母作りにチャレンジしているベーカーは多いと思いますし、実に素晴らしい考え方だと思います。
そうやって自家製で果実や麦などから酵母を作り出し、数十年もの長きにわたり、天然酵母のパンを作り続けているお店がたくさんありますね。
しかし、これらの天然酵母のパン屋さんで売られているパンは、食感的には硬い物が主体であり、ふんわりしたパンは売られていないと言うのが実情でした。
なぜかと言うと、果実などから作った酵母は味は良いのですが菌数が少なく、パンを膨らませる力が弱いのです。
ですから、おのずと硬いパンが主体となり、噛み締めるほどに味わいのあるパンを作るのが、理にかなっているのです。
それに、そもそも安心安全を追求している方々というのは、砂糖や油などもあまり口にはしませんので、柔らかいパンを作る必要がないということもイースト菌を使わない理由の一つでもあると思います。
しかし、最近ではあらゆる所で天然酵母パンと言う物が売られています。
しかもふわふわの・・・
あれはいんちきなのでしょうか???
実はパンを膨らませる為に必要な菌は、日本においては一種類しか作る事が出来ないでいましたが、日本以外の風土では、別な菌が存在し、それを使う事でふわふわしたパンが完成するのです。
外国から菌を輸入し、それを特別な部屋で培養させて供給しているのですが、この菌で作られるパンは、非常に発酵力があり、独特の甘い香りを持っていますので、甘くふんわりとしたパンが完成するのです。
すべての甘い天然酵母パンがその菌を使っているわけではありませんが、日本の風土では育たない菌なので、日本で出回っている甘いパン用の菌は、輸入された物を培養して使用しているのです。
ところが日本人はそんなことでは引き下がりません(笑)
今までは不可能であった、甘いパンをふんわりと焼き上げる為の天然酵母をいくつか作りだしたのです。
大したものだ・・・・(拍手)
こうなると、もうパン屋の出番ではなく微生物研究の世界ですけどね (^_^;)
と言う事で、今ではソフトな天然酵母パンが普通にコンビニでも売られるようになりました。
がしかし、イースト菌のパンの方が圧倒的に人気があるのはなぜでしょうか?? 国民の多くは、そんなに添加物・そして化学的に作られたイースト菌が好きなのでしょうか?
あれだけ様々な天然酵母パンが存在するのですから、別に添加物入りの化学的に培養されたイースト菌のパンなんて食べなくても良さそうなものだと思うのですが・・・・
ということで、ここでは天然酵母のパン屋さんで良く踊っている ・・・安全・安心・無添加・国産・・・ という言葉について考えてみたいと思います。
天然酵母パンのお店で使う酵母って?
これは、嘘でない限り天然酵母を使用していて、尚且つ食品添加物は極力少なくしているか、あるいは全く使用していないお店だと思います・・・か?
もちろん全てを天然酵母で作っているお店もありますよ。
しかし、天然酵母の無添加パン・・・もいくつかおいてある・・・ な~んてお店も沢山あります。
それから、天然酵母は特に自家製の場合、独特の香りはありますが発酵力が弱いと言う傾向が多い為に、イースト菌を併用しているパン屋さんも沢山あります。
併用しているという時点で、それはもうイースト菌は危険ではないという認識をおもちなのですかね?
そもそも、天然酵母であれイースト菌であれ、スタートはぶどうであったり麦であったり、化学的に培養されていたりしても、最終的にパンを発酵させるほどの強くて香りの良い菌の種類は同じです。
日本で作られているイースト菌は雑菌がほとんど含まれていない優秀な菌の集合体ですから、パンを膨らます力はバツグンに強いのに対して、自家製の天然酵母は、適度に自然界の様々な菌が混在している事によって、イースト菌とは別の風味を醸し出す事が出来るのですが、イースト菌に比べるとパンをふくらます事の出来る菌数は少ないので、どうしてもずっしりとしたパンができてしまうのです。
そう考えると、生まれは農家であっても都会であっても、はたまた試験管ベイビーであっても、人間は人間だと言う事になりはしないでしょうか?
ならば、イースト菌も最終的には天然の菌が活躍する訳ですから、天然酵母とも呼べると思います。
少しややこしくなってしまった・・・・・(^_^;)
では少しわかりやすく整理してみましょう。
天然酵母のパンと書いてあるお店の種類
○自家製酵母とメーカー天然酵母で、無添加だったり、なるべく無添加のお店
そして更に、安心安全という意味では
添加物の使用に関しての考え方
○製造段階で、添加物は完全に使用していないお店
○原材料にも添加物を使用していない物を選んでいるお店
○原材料になる前の原料に至るまで、完全無添加無農薬の物を選んでいるお店
○なるべく添加物を減らして使用しているお店
○出来るだけ無添加の原材料を使うようにしているお店
とまあ実に沢山の種類のお店がある訳です。
これは、それぞれのオーナーの考え方による違いですが、いずれも多少の表現方法の差はあれ、添加物が身体に悪影響を及ぼすものであると信じている方々であることは間違いありませんね。
というよりも、買う方の我々もそうですが、メディアがそのように報じるので、それを何となく信じて、そして何となく避けた方が良いもの・・・と判断しているという方が圧倒的多数でしょうが・・・
一般に売られているパンは、添加物と農薬まみれで、とても家族に食べさせる事は出来ない・・・
もちろんイースト菌も化学的に作られた添加物だらけの材料なので、その代わりに天然酵母を使って、更に出来るだけ添加物を使用しないパン作りを目指そう・・・
こんな発想から、天然酵母のパンを作られている人も多いのではないでしょうか?
皆さんのほとんどは、食品添加物は身体に良くないと思ってはいるでしょう。
だって、そのようにテレビやら本やらでそのように書かれていますから・・・
さらに、家族や知り合いに健康を害している人がいたら、きっと食品添加物のせいかも??と疑いを持つ人が増えているでしょう。
でも、普段は何も気にせずに添加物入りの食品をた~くさん食べている人が圧倒的多数ですね。
国産という言葉がここ数年来安心のキーワードのように飛び交っていますが、外国ってそんなに信用できないのか????
この、善悪ではない問題は、法律では裁けない問題なので、結論がでることはありません。
というよりも、食品添加物に関しては国が法律で安全だから使っていいですよと決めたものしか使えませんので、事実上法律が認めた安全基準であることだけは事実ですけどね。
あとは自分がどう思うか・・・この一点ですね!
テレビで有名な医者がそう言っていた・・・
特集で添加物は危ないと言っていた・・・
食品添加物が危ないという書籍を何冊も読んだ・・・
法律で認められたものであっても、そのすべてが正しいなどとは誰も思っていませんし、様々な情報が飛び交っていて、実のところ本当のことは解りようがない・・・と言う思いもあることでしょう。
最終判断は皆さま個人ですが、疑わしい情報に惑わされてしまっている人が多いということを痛切に感じます。
次回以降もこの点に関して一緒に考えていきましょう。