ベーカリーアドバイザーの部屋別館

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

ベンチタイムの色々

 

さて今回は「ベンチタイム」について色々と書いていきたいと思います。

 

ベンチタイムと言うのはいったい何のことなのかはお分かりですよね。

そうです、パン生地を分割して丸めた後の休憩タイムの事ですね。

このベンチタイムについては、一般的なレシピに多く書かれているのが20分~30分と言う時間。

ですので多くのご家庭でのパン作りでは、タイマーなどを使用してこの時間をきっちり計り、タイマーがピピピとなったら成形を開始するということが当たり前のように行われていると思うのです。

 

しかしこのベンチタイムという休憩時間の使い方を誤ってしまうと、パンが台無しになってしまうことがあります。

それっていったいどんな時を指すのか考えていきましょう。

 

生地の捏ね上げ温度が目標と違ってしまった場合

 

生地の捏ね上げ温度が予定よりも低くなってしまったとしたら(例えば3℃位)、皆様はどのように対処していますでしょうか。

「何もしていない」と言う方がいらっしゃいましたら、それは完全にアウトになります。

捏ね上げ温度が低くなってしまった場合、予定されている第一発酵時間では膨らみの弱い生地になってしまいます。

具体的に言うと、このまま作業を続けていけば、オーブンで伸びない、そして表皮が固い、内層もつまったようなパンになってしまうでしょう。

したがっていつもよりも温度の高い場所(基本が26℃位なのでこの場合は28~30℃位の場所)で第一発酵をとり、さらに時間も予定よりも10分~30分位余計に発酵させることがとても重要なのです。

もちろん逆に捏ね上げ温度が予定よりも高くなってしまった場合はこの逆で、涼しい場所(冷蔵庫など)で第一発酵をとり、時間も少し早めに終了させてということになります。

この説明で何となくはご理解いただけるものと思いますが、今回はさらに細かく説明しておきましょう。

 

捏ね上げ温度が低くなってしまったのが冬場のパン作りであった場合

暖かい場所に置いたり発酵時間を少し長くしたとしても、以外にもその後にまた温度が下がってしまうことがあります。なぜなら気温が寒いからであり、特に分割するとき、そして何よりもベンチタイムで冷えてしまうのです。ですので、冬場はベンチタイムも暖かな場所でとることがとても重要になります。

 

捏ね上げ温度が低くなってしまったのが夏場のパン作りであった場合

冬場よりも室温が高いために生地にとってはダメージが少なくなります。ですのであまり暖かい場所に置いておきすぎると今度は生地温度が上がりすぎてしまうことがあるので逆に注意が必要となります。また当然のことながらベンチタイムの部屋の温度も高いでしょうから、夏場の場合は多少の生地温度の低さはその後の作業中に自然と改善されていくことが多いということも頭に入れておきましょう。

と言うことで、第一発酵中もベンチタイムも、そしてもちろん成形の最中であっても、それらすべての時間が気温(室温も)と関係しているわけですから、毎回そこには細心の注意を払っていなければならないのですね。

 

パン生地がいつもよりも固かったかなと感じた時

 

まずいつもよりも固いかなと感じるのだとすると、大きく分けて二つのことが考えられます。

一つは水の量や小麦粉の量を間違えた場合などの計量ミス

二つ目は生地の温度が高くなってしまったことによる捏ねすぎ状態

 

まず計量ミスで固かった場合は、水を捏ねながら少しずつ足していけばいいわけですが、まあこんなものか・・・と思って生地を完成させてしまった場合、その後の発酵によってさらに固くなっていきます。

その原因は、一つ一つの気泡も固いということですから、このようにおしくらまんじゅう状態になり、摩擦が強く発生するからです。

ですので、固めの生地の場合は分割後のベンチタイムでも回復に時間がかかります。

そこを理解せずにいつも通りのベンチタイムで休まっていない生地を強引に成形してしまうと、さらにさらに摩擦が発生して過発酵状態になってしまいます。

過発酵状態のもとでは、パン生地はグルテンが破壊されてきめ細かいパンになりません。

そしてオーブンでは暴れてしまい、大小バラバラな気泡や風船のように外部に膨らみができたりして、形もかなり悪くなります。

では、かと言ってベンチタイムを長くすれば済む話かと言うとそうでもありません。

ベンチタイムの間もイースト菌は活動している訳ですから、休ませるはずのベンチタイムでさらに摩擦が起こって過発酵へと向かってしまう場合もあるのです。

ではそんなときに最善の対策とは一体何でしょう。

 

生地が固いかなと感じた時は

摩擦を起こさないような取り扱いが重要となります。分割の際の生地の扱いに注意し、丸めるときは軽く優しく行い、もし丸めにくいほど固いと感じた場合は、丸めることはせずに分割でカットした状態のまま後はいじらずにそのままベンチタイムを取ります。するとベンチタイムすなわち休憩時間は少なく済み、発酵による摩擦も少なく穏やかに休憩をとることができるでしょう。この場合もベンチタイムをどの温度帯でとるかは先ほど説明した通り生地の温度によること、そして乾燥には十分注意することは言うまでもありません。

一方で計量ミスが水以外で、例えば砂糖を入れ忘れていたとか卵を入れ忘れていたとかの場合は、ベンチタイムがどうという話では済まないため、残念ですがやり直すしかないでしょう。

 

 

ということで、今回は生地の気持ちになって休憩時間であるベンチタイムの行い方について書いてきました。

「オーブンでふっくらと膨らまない」とか「すぐに固くなってしまう」と言う症状は、大抵の場合ベンチタイムの考え方を間違えている、そして温度管理ができていないことが原因です。

パン生地と言うのは、作業中のどの段階であっても「まるで赤ちゃんのほっぺ」のようでなければなりません。

いつまででも触っていたくなるような、そんな生地作りを目指して頑張ってくださいね。